あえて商用Linux である SUSE Linux (SLES/SLED)のでデメリットを考えてみる。

このブログで「如何にして Linux は SUSE Linux の事しか書かないのか」という疑問を読者の方がお持ちだと思います。私は、「他人と違う事をやらねばITエンジニアとして生きていけない」というのが、ほとんど人生のコンセプトみたいなものでして、流石に Novell の Uniux Ware には手が出なかったけれど(後にひと悶着した SCO UNIXですね)、やっぱり若いころ使った UNIX 系 OS をやりたかったし、PC用に(当時は高価だった)C言語コンパイラもついてくるという、入門用の Linux ディストリビューションを探していました。 Live Door が販売した Lindows(後のLinspire) を使ってみてなんじゃこれと挫折し、Cardela Open Linux を突っ込んでGUI見て「だからこれは何じゃ?」と3日で諦めた、90年代後半。そして2000年以降、いよいよ Linux がどこでも使えるようになった頃、 RedHat に苦しみました。


一応ベテランとなっていた当時、ヒマそうにしていると、後輩から「そんなにヒマならRedHat をインストールを手伝って欲しい、ベテランで高い給料もらってるんだから働け」と言われ、ま、いい暇つぶし、と思って入れてみたけれど、もう大変。SCSI のディスクドライバが認識できない。おまけにインストーラはテキストだし、途中でハングアップしたりするしで、どうもハードベンダーではテスト済のモデルなですが、ドライバーは別に入れなければならないわけです。正直、昔の Lindows より面倒くさい。しかも配布されているのはフロッピーのイメージのみ。「ヲイ、このモデルどう見てもFDD付いてないンだけどなァ」「いやぁ RedHat ならよくあることですよ」と若者に馬鹿にされたのは言うまでもありません。

納品までヒマがかなりあったので、試しに 評価用の SLES9 を入れてみると、ドンピシャで、何のトラブルもなくYaST の GUI インストーラが立ち上がり、インストールが出来ました。それ以来、 Linux と言えば SUSE Linux なんですね。RedHat と SUSE を比較すると、圧倒的にトラブルの少ない SUSE の方が入門するには敷居が低い。

ところで 「SUSEは日本語のドキュメントが少ない」とか「ドマイナーな Linux 」という印象がありますが、もともとが企業向けのミッションクリティカルなサーバーOSとして人気があるので、比較すると RedHat のように「誰でもお気軽」に情報を出せないところがデメリットなのかも知れません。

= Google Trend による認知度傾向 = 

Google Trends によると、過去、近年の日本での検索ワードのレート 6:45 なので、SUSE Linux は RedHat の 1/7 以下の認知度、という感じでしょうか。

過去1年の日本でのトレンド
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ところが、海外も含むトレンドを見ると RedHat が 100弱に対して SUSE は 50 弱のレートですから、「商用 Linux では第二の人気のディストリビューション」と言っても、まず誤解ではなさそうです。1:2 程度の認知度であるわけですね。

ワールドワイドの過去1年のトレンド
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※もっともこれは「商用 Linux」としての認知度で、これに CentOS とか Ubuntu なんかの無償ディストリビューションを加えると全然違う数字になります。ってか、(Ubuntu って商用なの?)


ちなみに、RedHat の過去5年の都市別人気度を見ると、一位は「千代田区」です。3位に中央区が入っています。他にも、渋谷区、新宿区、東京じゃないけど横浜市などがベスト20位以内に入って行って、「首都圏」というざっくばらんな地域でみると、「RedHat というアメリカ製品だけが大好きな異常な東京人」という構図が見えてきます。何故か日の丸ディストリビューションはほとんど人気がありません。他には、シンガポールやインドの各都市、ソウル、香港などがランク入りしています。「東アジアで大人気の RedHat」なのですね。


過去5年の都市別のトレンド
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もっとも、逆に Google Trend では、SUSE の人気都市の上位はズラリと「ドイツの都市」が並ぶのも、まぁ当たり前なんですけどね。

国別でみると、ドイツはもちろんですが、チェコ、ロシア、ポーランドなどの東欧諸国、何故かブラジルなどのポルトガル語圏など、非・米英語圏での認知度が高いようです。私のサイトを訪れる海外言語は、英語がもちろんですが、en_gb やチェコ、ポルトガル語(ブラジル)などのアクセスがたまにあります。たまに Google Trends を見てみると、Novell 傘下になって以降、年を追うごとに en_us での認知度は上がり続けており、米国からオフショアで仕事をするインドなどでの認知度も年々上がってきているような気がします。

= SUSE Linux のメリット =

本題に入る前にずいぶん寄り道しました。SUSE のここが嫌いという前にどこにメリットがあるのかまずは並べてみます。

- 圧倒的に使い易い YaST

SUSEは YaST に始まり、YaST に終わる、というくらい、Linux の管理者にとっては萬金丹のような万能ツールです。これがある意味では最悪のデメリットになります。

- 比較的新しいハードウェアでもまず動く

一度だけ、10Gb NIC にはまったことがありましたが、他のサーバーに合わせて古いバージョンの SLES を入れたので、コンパイルする必要がありました。
それ以外、まずドライバ問題でインストールで戸惑うことはほとんどありません。新しい機種の場合は、できるだけ新しい SLES のバージョンを入れた方が無難ですね。
これもある意味 SUSE のデメリットになります。

- 落ちたことがない

もう10年以上 SLES を扱ってきて、まず、本番環境で「落ちた」「再起動できない」という経験に当たった事がありません。もっともテスト環境だと、古いハードディスクが御昇天して起動できなくなったという経験はよくあるのですが、まずハードウェアのトラブルがなければ、運用中のトラブルはまず皆無でした。あくまでも自分の経験ですが、システムがトラブると、エンジニアとしては必死に原因探しをするので、スキルも上がります。本番環境で滅多にトラブルが出ない、 SLES の安定感は、安心感は絶大なのですが、逆にこれもエンジニアのスキルとしてはデメリットになります。

= SUSE Linux のデメリット =

- 何でもYaST 頼りになる

SLES,SLED, openSUSE いずれも YaST があれば、ほとんどの管理作業は自動化されるので、Linux の基本的な設定を行うコマンドをほとんど覚えません。LPICなどの公認資格を取ろうにも、YaST で何でもできてしまう SUSE のエンジニアは不利ですね。逆にCLP (Certified Linux Professional)というマイナーでSUSE ローカルな資格制度があります。残念ですが、現在日本では行われていないようです。所詮ノベルさんの製品資格ですからね。

コマンドラインで yum や apt-get に相当する zypper というパッケージ管理ツールもありますが、まず、zypper は使いません。綴り間違えると面倒だし。

初心者にもお勧めな SUSE Linux ですが、レベルを上げるためには、やっぱり vi の基本操作ができるとか、サービスのリスタートができるとか grep でログの見方を知っているとか、簡単なシェルスクリプトが書けるとか、その手の技術に達するにはやっぱり Linux の知識は必要なんです。でもYaST にもログビューワなんかが付いていると、ついつい YaST 頼りになってしまいます。このテの操作は、Debian 系を除く他のディストリビューションとほとんど同じなので、基本的なアンチョコ本を持っている必要はあります。正直に白状すると私は YaST なしでは Static IP の変更ですら方法を知りません。一応できるようですが、マニュアルを見て5秒で諦めてしまいました。

~.conf なんてどこにあるのか知らないし、ついつい「httpd.conf ってどこにあるんだっけ?」と find を使ってしまいます。YaST で細かいチューニングはほぼできます。この程度の知識は欲しいのに、その知識自体が身につかないことが多いです。サービス関連はもっぱらアンチョコ本が頼りであることには変わりありません。もっともディストリビューションが違ったり、ソースからインストールする場合は探すことになるんですね。それは何を選んでも同じです。

逆に SUSE から他のディストリビューションに乗り換えた方は、よく海外のフォーラムなんかに「Ubuntu 版の YaST に相当するツールはないのか」という投稿が見当たります。一応 YaST も OSS なので、ディストリビューターが実装する事はできるのですが、非公式にサポートしているのは Oracle くらいの様です。CentOS に Oracle 版の YaST を入れた猛者がいらっしゃるようですが、慣れって怖いものです。

テキスト端末でも簡単なUIで管理作業ができる YaST の恐ろしさは、ベテラン Linux の管理者にとっては仕事を奪うほどのキラーツールです。

- インストールの敷居が低すぎる

これもエンジニアとしてのスキル向上の問題になります。何しろほとんど SUSE Linux ではシステムやパッケージのインストールでは躓かないので、「あの手この手」を使わなければならないシーンに滅多にお目にかからないのはいいことなのですが、いざ「あの手この手」をつかわなければならない時の、「技術の陳列棚」が身に付きません。だから「SUSE で困っています」という Yahoo 知恵袋の質問なんか探しても、情報が少ないのです。Apache を入れようとして「# yum install httpd とやったら拒否られた」」とかそんなレベルなのです。

- 日本語の情報の少なさ

これは、日本総販売元のノベル株式会社のリソースの問題もありますが、日本での利用者が少ないため、日本語情報が少なすぎる、とよく言われます。もっとも英語で検索すると、ゴロゴロ出てくるのですが、英語アレルギーなニッポン・ガラパゴスなエンジニアにとってはつらい事かも知れません。これは、 SUSE Linux を利用している顧客の多くがベンダーのサポートを適切に受けたヒミツのハイエンドプロジェクトのシステムなどが多く、最新の SLES12 では Live Patch などと言う怖い機能がサポートされるなど、話題にもならないけれど、深刻な問題が表面に出てこない事も考えられます。

幸いな事に openSUSE を含めマニュアルは、そこそことニホンゴでも充実しています。また、openSUSE と SLES, SLED は共通点が多く、openSUSE である程度トレーニングしておけば、まず SLES, SLED の商用版でも応用が利きます。openSUSE のサイトには、SUSE Enterprise の公式リポジトリにない、SUSE 非公認の OSSパッケージも見つかるので、ブラウザから自己責任で1クリックでインストールできます。まず、はじめてトライする Linux の無償ディストリビューションとしては openSUSE は良い一つの選択肢です。

よほどマイナーなパッケージでなければ、まず openSUSE ≒ SLES/SLED というケースが多いでしょう。RedHat における Fedora との違いほどの差はありませんし、openSUSE は GUI や最新のハードウェアにトライが多く新鮮さを感じても、サーバーとして割り切った場合でも、そこそこ安定して利用できます。それほどクリティカルな目的でなければ、openSUSE でもいいやという場合もあります。ただしサポートがない、LTSが短いという点は心得ておくべきでしょう。ハードウェアのライフサイクルを考えると、企業ユーザさんには openSUSE はトレーニング目的以上にはお勧めしません。Fedora や Ubuntu ではないデスクトップ向けの Linux を、重要でもなく、低コストで古いPCに入れたいというのなら、お勧めできるディストリビューションの一つです。

また、手軽になった Windows10 の Hyper-V にも初めから対応しているので、Hyper-V 環境下で仮想ドライバは Microsoft 標準のドライバが自動認識されてインストールされます。

ただ openSUSE や SLED (SuSE Enterprise Desktop) をデスクトップとして利用する場合は、日本語を優先言語にしますが、私が SLES を使う場合は、優先言語を英語にして、まず使わない日本語は追加言語としています。メッセージが日本語だと、探しても全然ヒットしない。英語のマニュアルを見ながら操作する場合も、日本語では非常に面倒くさい事になります。

まぁ、英語に強くなりたいITエンジニアには、日本語情報が少ない事も英語のトレーニングにはメリットかもしれません。

- 国内サードパーティで未対応

これは、非常に困った問題で、これだけメジャーなディストリビューションでも、Linux ≒ RedHat と考えるガラパゴス・サードパーティ・ソフトウェアビジネスでは、まず 「SUSE Linux 何それ?」という困ったIT企業が非常に多い所が問題です。何しろ、少子化や先の経済発展が見込めない日本国内ビジネスだけでも当面は食っていけるので、コストを考えるとサポートどころかマニュアルさえ、英語化しないし、海外向けの会社案内のページさえ作らないのが普通ですから、Google Trends でも見たように、RedHat 大好きな、首都圏ビジネス主義、地方無視のニッポンのIT産業では、まぁ当然です。

だから、日本企業でも中規模企業が海外に進出する時は、現地担当者が当たり前のように、先進的で世界スタンダードな情報システムを使っているのに、日本では、海外グループ企業との情報化の一本化ができないのですね。こういうところから日本の斜陽化が始まっています。もっとも、これは顧客のシステムの首根っこを押さえている日本のSI屋ではパスポート持っているエンジニアやセールスマンがいないのか、顧客が海外進出しても「そっちは知らんぷり」なので止むを得ないのです。

そもそも、海外のIT業界では「日本市場参入の高い壁は世界の常識」という事で、東京をパスして、シンガポールやソウルに極東地区のビジネス展開した方が、成長性の高い中国ビジネスに参入しやすい。

まぁ SUSE と RedHat を比較してどっちがいいか、と思っている方、そうこのブログを読んでいる貴方です。グローバルで活躍できる人材になるか、それとも先が見えない、英語嫌いなガラパゴスエンジニア、ガラパゴス経営者で会社が潰れるまで働きたい、という方にはもうお分かりかも知れません。

どうせサードパアーティ製品なんて、ソフトウェアそのもののサポートをやればいいのであり、「インストールができるか否か」のチェックすら主だったディストリビューションで行わないので、まったく困ったものです。

- チューニングのスキがない

普通、デフォルト状態でインストールしてほとんど最高の性能がでるようで「それからチューニングするのが楽しみウッフン!」という方には物足りないのかも知れません。SAP なら SAP 用のパッケージにカーネルパラメータが用意されています。もしかしたらハイエンドのシステムではカーネルチューンしているのかも知れませんが、カーネルを直接つつく様な作業はほとんどやりません。

また SAP や Oracle と言った、ベンダーと、積極的に "Enterprise" な商売をやってきたせいか、オープンソースにコミットした「オープン性」の強い RedHat と違い、ダンマリと守秘性が高い「企業向けの SUSE Linux」というスタイルが企業には安心感を作っています。

- あまりに良すぎる安定性

まず、ハードウェアのトラブルでもなければ、リセットボタンに手を出す機会がないという、超安定性は、逆に言うとデメリットになります。まぁ、Windows なんか使っているとパッチを当てては毎月再起動、そのうちレスポンスも帰らず「またか...」という感じで、おまじないを唱えつつハードリセットをかけるMTBFの短さが当たり前なのですが、 SuSE Linux Enterprise の場合、まずハードリセットする機会がありません。もっともそんなことした後の fsck の怖さ(とにかく MTTR に時間がかかる)がありますから、やりません。というより「松竹梅」の「松竹」クラスの信頼性が高いハードウェアの運用環境ではやった経験がないのです。ラッキーな事に、お客様の責任感にも感謝しています。勿論、私のように「梅以下」の安物PCを酷使しているテスト環境では日常茶飯事ですが、これはそれなりに勉強になります。他のディストリビューションは知りませんが、ベンツでアウトバーンを安心して 250Km/h でかっ飛ばすような安定感は、V8 のコルベットでバンピーな Route 66 を 55Ml/h 出してパンクする怖さと違い、何とも言えません。

だから、事故った時が怖い。

これが SUSE Linux の怖さであり、デメリットなのです。

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とまぁ、思いっきり悪口羅列したいと思って書き始めたのですが、結局は、SUSE Linux の安定感、管理の容易さという良い面が、デメリットとして相反するような書き方になってしまいました。



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商用, Linux, SUSE, RedHat, 比較, メリット, デメリット




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by islandcenter | 2017-07-03 00:54 | SUSE | Trackback | Comments(0)