SUSE Linux 「難しい、複雑を簡単に」YaST によるパーティション管理

SUSE Linux の YaST Partitioner によるパーティション管理を説明します。





SuSE Linux (SLES, SLED, openSUSE) のパーティション管理は、通常 YaST の "Partitioner" によって行います。勿論、「fdisk や fstab の直接編集の方が慣れている」のであれば、その通りで、SUSE Linux でも基本的なコマンドラインを使ったパーティション操作は、他のディストリビューションと同じです。ただ、アンチョコ本に書かれている様なパーティション操作に、不慣れな管理者にとっては YaST の "Partitioner" は心強い味方となるでしょう。

また私の様に「コマンド叩きには疲れたよ、老眼鏡ほしい」と言うような年寄管理者にとっても、一度 YaSTの"Partitiner" に慣れてしまえば、もう「コマンド叩きはいいや」と思うかもしれません。資料の少ない GParted の様なGUIを後で自己責任で導入するより、YaST Partitioner はSUSE によってサポートされる標準装備なので、安心して使う事ができます。

不用意な操作で、データがそっくり喪失されるパーティション管理は、事前にバックアップを取っておきたいくらい、わかり易い手順と確認が重要です。

- 起動 -

YaST の Partitioner は CUI 版 yast コマンドと、GUI 版 yast2 の両方に実装されています。

どちらかと言うと、[TAB][SPACE]{+][-] などを多用する CUI 版より、1クリックでダイアログが遷移する GUI 版の方が、誤操作は少ないかもしれません。やむを得ない場合を除いて、GUI 版 yast2 の Partitioner を使う方をお勧めします。何しろパーティション操作は、データロスを伴うエキスパートでもやりたくない非常に危険なタスクです。
という事でここでは SUSE Linux のGUI 版 yast2 の Partitioner からのパーティション操作を見てみましょう。

# yast2 & (またはyast) > System > Partitioner を選ぶと、一応「非常にキケンを伴う作業でデータを失うかも知んないけん熟練者だけやってケロね(意訳)」という警告のダイアログが出ます。 "Continue" します。

※なお、ここでは基本言語は English に設定しています。YaST は ALT+キーのショートカットは英語版の方が便利なんですね。勿論、言語を "Japanese" にすれば一応おおよそ理解できるニホンゴ表記になります

GUI版
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CUI版
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- 参考文献 -
Using the YaST Partitioner

- パーティションの作成 -

※今回は機材の都合により SLES11sp4 を使っています。

たまたまわずかばかりの空き領域が /dev/sdc にあったので、"Hard Disks" > "sdc" を選んで "Add" ボタンを押してみました。
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まずは、空きディスクを、プライマリパーティションにするか、拡張パーティションにするかどうかです。一般的なPC/AT アキテクチャでは、OSに関わらず一つの物理ディスクにはプライマリパーティションは4つまで作成できます。なぜそうなのかはここでは聞かないでください。もし間違っていれば、コメントください。

ここでは "Primary Partition"を作り、次に拡張パーティションを作ってみます。

サイズを最大サイズにするか、指定サイズに控えておくか、ここでは "Custom Size" を選んでみました。最大サイズ以下の数値を与えます。
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※ これば「アナタの趣味だ」とご批判あるかも知れませんが。ディスク容量を物理ディスクの "Maximum Size” にせず、数10Gb 程度、空けておくのがいいと思います。 dd で同じサイズ、モデルの別ディスクにフルバックアップコピーを確実に取れるし、いざとなれば、別な Linux のシステムをインストールして、 Rescue 用にも使えるかな、という、あくまでも「趣味」かも知れませんが。

"Extend" パーティションが用意されます。 > Next

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今度は拡張パーティションの中に Logical Partition を作ります。> Next

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さて、ここがキモなのですが、パーティションをフォーマットするかしないか、フォーマットするならどのファイルシステムなのか、同時に、マウントしてしまうのか、あるいは、手動でマウントするのかの指定を行います。

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SLES9 では RaiserFS が標準でしたが、SLES10/11 では Ext3、SLES12 以降は、ロールバックできるように "/(ルート)" に BtrFS、別に分けたデータ用のパーティションに XFS がデフォルトとなっています。ただし SLES12 でも、スナップショット、ロールバックがが必要であれば記憶には BtrFS も使います。/database だとかのデータベース領域だとか、仮想化システムのスナップショットを取りたい場合などですね。
SLES では Ext4 の読み取りだけをサポートしています。ひと昔前の openSuSEでは Ext4 が採用されていました。

"Do not Format partition" を選ぶと、パーティションは初期化されないので、例えば、他のシステムから取り外したディスクのデータをそのまま使いたい場合はこちらを選びます。

"Mount partition" をチェックすると、Mount Point も同時に指定します。例えば /var を別パーティションにするとか、独自のディレクトリ、/database を別な専用パーティションにするなどの場合です。"Do not mount partiton" をチェックすると /etc/fstab に書き込まれないため、mount コマンドでマウントする必要があります。iSCSI デバイスなどでは、まれにマウントできない場合があったり、外付けディスクの電源が入っていない場合や二台目のディスクが「ご不幸」になられた場合、"fstab のご指定のディスクが見つからないよ"となります。正常起動できないので、起動時に mount するかしないかはそれぞれの目的次第です。

まず、システムをインストールする時の1台目のディスク(Raidの仮想物理ドライブも)は、特に意識しない限り "Mount partition" です。
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さて、拡張パーティションの用意がスケジュールされました。

"F" のマークが付いているパーティションは"フォーマットするぞするぞ!" の予定フラグです。 "Mount Point" のところが "*" となっているのは「起動時にマウントする予定なし」あるいは、「まだマウントしない予定」というシルシです。"?" が付いているのは、fstab に書き込まれていない、手動マウントが必要なパーティションです。
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次の画面のサマリで内容を確認します。"赤字" で書かれているのは、「フォーマットしちゃうぞ、消えちゃうぞ、ホントにいいのか?」という警告です。 "Do not format" を選べば別な記述がなされるでしょう。
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"Finish" ボタンを押すと「執行」されます。ここまでの操作はあくまで予定で、コマンドライン操作のように、生きたまま皮を剥ぎ、指先を折るような、後戻りできない拷問ではありません。

指定された内容でパーティションはフォーマットされ、fstab が書き換えられます。

"Finish" すると計画されたジョブ通りにフォーマットや fstab の書き換えが執行され、 Partitioner は終了します。

ではもう一度 Partitioner で確認してみましょう。
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実際にテストしてみます。

sles11:/mnt # mount /dev/sdc5 /mnt/test
mount: wrong fs type, bad option, bad superblock on /dev/sdc5,
missing codepage or helper program, or other error
In some cases useful info is found in syslog - try <--- おっと、失敗したみたい。
dmesg | tail or so
sles11:/mnt # cd test
sles11:/mnt/test # ls <---- 今の所何もない
sles11:/mnt/test # touch myfile
sles11:/mnt # umount /dev/sdc5
sles11:/mnt/test # ls -al
total 8
drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 1 15:40 .
drwxr-xr-x 4 root root 4096 Jun 1 15:39 ..
-rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 1 15:40 myfile <--- umount してもファイルが残っている
sles11:/mnt/test #

どうもうまく行かなかったようです。これは SLES11 で公式なサポートがない XFS を使ったことが原因です。

- パーティション削除 -

そこで、間違えてつくってしまったパーティションの削除をやってみます。物理デバイスからパーティションを選び右ボタン、あるいは Delete ボタンから "Delete"します。

確認して Next
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リストから消えました > Next

ここまでは、「作業の予定」が定義されただけです。 "Finish" ボタンで「執行」され後戻りできなくなります。不安があれば "Abort"してください。

実際には "Finish" によりパーティションのフォーマットが開始され、データが削除されます。
ここで不安があって、中止したい場合、最後のチャンスです。
"Abort" できます。

サマリ画面で、削除される予定であることが「赤字」で表示されることを確認して > Finish

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- 再度チャレンジ -

XFS パーティションのマウントに失敗したので SLES11 デフォルトの Ext3 フォーマットしてみます。後は同じ操作です。
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実際にマウントしてファイルが書き込めるか確認してみましょう。

sles11:/mnt # mount /dev/sdc5 /mnt/test <---- 問題ないみたい。
sles11:/mnt # touch /mnt/test/My-Test-File <---- ファイルを作ってみる
sles11:/mnt # ls -al /mnt/test/
total 24
drwxr-xr-x 3 root root 4096 Jun 1 16:39 .
drwxr-xr-x 4 root root 4096 Jun 1 15:39 ..
-rw-r--r-- 1 root root 0 Jun 1 16:39 My-Test-File <--- 作られたファイル
drwx------ 2 root root 16384 Jun 1 16:38 lost+found <--- パーティションのルートに必ず作られるディレクトリがある
sles11:/mnt # umount /dev/sdc5 <--- umount してみた。
sles11:/mnt # ls -al /mnt/test/
total 8
drwxr-xr-x 2 root root 4096 Jun 1 16:23 .
drwxr-xr-x 4 root root 4096 Jun 1 15:39 ..
sles11:/mnt # <--- 別パーティションのファイルは見えなくなった。

どうやらうまく行った様です。

マウントしてもう一度 Partitioner で確認してみます。
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"Mount By" に "?" が付いているパーティションは、fstab にかきこまれていない、手動でマウントされたものです。パーティション作成の時に "Mounting Opttion" > "Mount Partition" をチェックしてマウントポイントを指定しておけば、fstab に書き込まれ、起動時に自動的にマウントされます。

※ これはテスト環境なので、起動ディスク以外のパーティション以外は手動マウントしています。物理ディスクをデータ用に追加した場合、もしディスクに障害があると、fstab にマウント指定されていると起動できなくなります。仕方がないので Rescue 状態から、皆さんの大好きな vi エディタで fstab の該当の行を削除(コメントアウト)する必要があります。


- いかがでしたか -

SUSE Linux でのパーティション管理は、熟練エンジニアにとっても手軽だし、「まだ未熟」な Linux オペレータさんにとっても、割と理解しやすいインターフェースが YaST の中に用意されています。Linux の"キホン"さえ知っていれば、「パーティション操作」という、データロスにつながり易いクリティカルな作業も、fdisk の難解なコマンドオプションと表示内容を理解して、闘う必要もなく、何とかなるものです。

他のディストリビューションでは、これほど使いやすいパーティション管理ツールが「標準装備」されているわけでもなさそうですし、たとえ 「GParted の様なGUIツールがあるじゃん」と言っても、GParted パッケージそのものが一般的なディストリビューションにデフォルトで付属されてインストールされていないようですし、インストールで挫折するくらいなら、ハジメから「Linuxを知りたいし安定して使いたい」事を目的としては SUSE Linux の敷居の低さが理解できるでしょう。

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SUSE Linux 15 YaSTの基本









- Key Word -

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by islandcenter | 2017-06-02 11:52 | SUSE | Comments(0)