SUSE Linux: SLES 15 リリースノート(bata)を読んでみた。

openSUSE Leap 15 のリリースに併せ、SUSE Linux Enterprise Server/Desktop 15(SLES15/SLED15)のパブリックベータ、および、リリースノートが公開されています。パブリックベータは、DVDには焼けない6.6Gbから13Gbまでの3枚です。

ビビッています。あまりのサイズの大きさにベータ版を落とす気力失いました。
このサイズなら、ウチでは三日かかる。インストールにブルーレィ必要じゃないのか?

時そば Windows10 の様に、バージョン 13, 14 をすっ飛ばして 15 です。

という事でファーストインプレッション前のリリースノートチェックです。


ベータ版のダウンロードはこちら(Micro focus 無料アカウントが必要です)

SUSE Beta Program

Public Beta SUSE Linux Enterprise 15

リリースノートはこちら

SUSE Linux Enterprise Server 15 GA Release Notes(SLES)

SUSE Linux Enterprise Desktop 15 GA Release Notes(SLED) -- おまけ --

SLES15 のリリースノートから、私程度の低レベルな Linux 運用、、構築担当者にもわかる程度の SLES の変更点や注意点がいくつか指摘できます。SLED15 についてや、インストール、オペレーションに関わる部分以外はウニャむにゃとスッ飛ばして、サーバーインフラ担当者として気になる点を重点的に読んでみました。

※ 実際の製品版:SUSE Linux (SLES15) のインストールとファーストインプレッションはこちら


- Basic は gnome 標準 -

Basic インストールを行った場合、gnome がいつものように標準でインストールされるようです。Desktop Workstation Extension (WE) をインストールする場合、 X11, Wayland が利用できます。まぁ、サーバーで運用する場合、LibreOffice があれば、csv の加工が便利だなぁと思う事は多いのですが、開発環境でもなければそれほど WE のデスクトップ拡張を入れる必要はないでしょう。そもそもサーバーのコンソールでグラフィックがゲロゲロ動いても意味ないですし、コンソールがトラブルと怖いですし、テキストモードで使う事が多いと思います。

ちなみに KVM では GPU の仮想化サポートが追加されたそうです。

- openSUSE Leap15 からのマイグレーション -

コアの共通化により openSUSE Leap15 からの直接アップグレードができるようになりました。無償の openSUSE で開発し、その後、運用のため、SLE のサブスクリプションを購入してマイグレートできるという事です。もちろん openSUSE Leap15 には LibreOffice から Gimp まで付いているので、SLE にアップデートした後はどうなるんでしょう。SLED のサブスクリプションを購入して WE をアクティベートしろという事なんでしょうか。そんなカタい事言わないのが、SUSEのいいところです。

ある意味、openSUSE は Leap 版から独自性より、SLES/SLED のマーケットリサーチの先行プロジェクト化したものになったという事です。


- 古いSUSE からのマイグレーションのチョークポイント RaiserFS -

RaiserFS が完全にサポート外となりました(合掌...)という事はSLE10 まで RaiserFS が標準だったので、RaiserFS を含む SLE9,10の場合 -> SLE15 の直接アップデートはできません。SLE 12 までは、RaiserFS のパーティション作成はできなくても、マウントまではサポートされていたので、いったん SLE12 にバージョンアップして、RaiserFS を BtrFS に変換してアップデートしろ(方法は書いていない)とあります。SLES12 のマニュアルには、ルートファイルシステムの BtrFS へのコンバートはサポートしていないので、実質新規インストールが必要なようです。他にもいろいろ制限があるようで、SLE11 までは、いったん SLE12 に上げてから、SLE15 にマイグレーションする方法が、一番無難な様です。後々、色々と Knowledge base に出てくるでしょう。

Migration from Ext and ReiserFS File Systems to Btrfs

- セットアップは4種類 -

Basic, Text(と基本的なX環境), KVM Host, XEN Host の4種類のインストールパターンからセットアップを開始します。まず、XEN か KVM は後で入れることもできると思うので、ハイパーバイザー運用なら、 Text で入れて、後にハイパーバイザーを入れるパターンが多いのかなと思います。 JeOS のパッケージもあるので、単機能の DNS や Apache サーバーを仮想化運用するなら、そちらを選ぶのが良いかもしれません。



- 新しいGPT GUID パーティション -

難語です。Linux の従来の GPT から新しい GPT にデフォルトが変わったとの事。いったいどういう意味なのか、あまりブートで悩んだ経験がないのですが、ブート用のパーティションが 新しいブートパーティションがデフォルトとなったという事らしいです。Microsoft 製パーティションが見つかると、フラグが立つそうです。システムブートやブートパーティションの設定で悩む可能性がありそうですね。あるいは Windows とのデュアルブートのレベルになったのか、というあたり(と誤魔化す)です。

大抵、パーティションはカスタムで、システムインストールのデフォルトから作り直すと思います。エキスパートパーティショナーがどういう動きになるのか、気になります。



- NCC(Novell Customer Center)から SCC(SUSE Customer Center)へ -

今まで、SUSE Linux のサブスクリプション登録は Novell の NCC サイトで行ってきましたが、これが SUSE の SCC サイトに移るという事。アクティベーションした後のレポジトリも nu.novell.com から suse.com になるようです。

と言っても、サーバーはどちらも Novell.inc の本拠地、 Provo.Uta.USA にあるのは変わりないのですけど。


このため、一旦、アップデートしてしまうと、リポジトリが変更されているので、特に SLE11 から SLE15 に上げようとして、途中でインストールをやめてしまった場合のサブスクリプションのロールバックが面倒です。他にも SLE12 から SLE15 へのアップデートにも、インストール中に SCC へ登録しないで後でSCCに登録するよう、注意が必要な様です。どうもサブスクリプションをインストールの途中でアクティベートしないで、アップデートするのが正解な様です。

NCC と SCC は無縁の様で、実は共通化されているのですが、バージョンアップに伴い、キャンセルされたアクティベーションが NCC と SCC で同期化するまでかなり時間がかかります。まぁ、 SUSE のアクティベーションには、普通でも昼飯食う位の時間がかかるので、これは覚悟ですね。急いでいる場合は SUSE の日本の総販売元のノベルKKに電話するのが正解です。元気なころのノベルの担当者ほ速やかに対応取ってくれましたが、今のノベルさんの場合、プレミアムでもスタンダードサポートでも担当者さん次第です。大体平日の午前11時以降であれば、ノベルさんの普通の出勤時間なのか人手不足なノベルKKさんはそこそこに対応してくれます。回答は良くて翌日です。

このあたりはリリースノートの該当部分を注意深く読んでください。いずれ Knowledge Base あたりに Issue が上がって来そうです。

オフラインでのSLE15 へのマイグレーションは SLE12sp2 以降がサポートされている、という事になっているので、何かと SLE12sp2,3 などの最新版に上げてから行うのが無難です。

何れにせよ、今ほとんど仮想化運用だと思うのですが、 SLE9,10 あたりで動いているサーバーは、そのまま塩漬けにしてしまうのか、あるは新規にサービスを更新した方が良さそうです。



- qemu-kvm Wrapper がインストールされない -

デフォルトでは qemu-kvm Wrapper がインストールされないので、昔の SLES12 で動いていた、qemu-kvm Wrapper を使ったVM環境では動かないらしいという事。仮想マシンを qemu-kvm Wrapper を使わない環境で作り直すか(優先事項)、手動でハイパーバイザーに qemu-kvm をインストールしろとあります。


- /etc/SuSE-release はなくなった -

小さなことですがバージョンを表す SuSE-release はなくなり os-release に代わりました。ちょっと寂しかったりする。


- KVM のネストができる -

今までも「出来るらしい」とは聞いた事がありましたが KVM on KVM で、孫 VM を動かすことができます。ただしプレビュー版という事なので、くれぐれも本番環境では使わない事です。マニュアル用のスクリーンショットを取るような場合は便利かもしれません。その程度だと思います。


- SuSEFirewall2 が firewalld に置き換わった -

YaST から SuSEFirewall のアイコンが消えたので、びっくりして腰抜かさないように、と注意書きがありました。記載がないので firewalld の細かい点はマニュアルを読めという所でしょうか。


- YaST から Floppy Disk のサポートがなくなった -

だから腰抜かすなよ、という訳でもないのですが、AutoYaST や、ブートローダーのバックアップにFDは使えないという事。 -- それ以上の記述がないのではUSBメモリが必要だよ、って事になるのでしょうか。その点の記載はありません。もっとも、今時のPCサーバーにFDが付いていることもないので、FD自体の利用は考慮されなくなったという事でしょう。AutoYaSTやブートローダーの問題はいずれ、Cool Solution などに掲載されるでしょう。



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他にもハイパーバイザーの細かな点やCPUやアキテクチャの変更点、読んでも理解できないカーネルの複雑な変更点など、リリースノートには書かれています。いずれにせよ、読んで理解できる部分は、初めてのアップグレードや新規インストールの際のトラップホールとなるので、一読しておくべきでしょう。

以前、某SI屋のセールスマンと話した事があるのですが、「Windowsは常に最新にしてユーザのクレームとトラブルに巻き込まれろ。Linux はできるだけ塩漬けしてトラブルを起こすな」というのが、一般的なユーザさんのIT担当者の考えです。目鱗モノのご意見でした。

確かに、数年ぶりにリブートした Linux サーバーの fsck 場面は見たくないのは同感です。

とは言え、既にサポートが終わってサブスクリプションも売っていないバージョンを使い続けるのも理想ですが、担当者レベルでいざ問題が起きた時の、現場での上長への言い訳の準備はしておくべきです。組織トップへの言い訳の準備のため、サブスクリプションの予算提案、購入提案と、マイグレーションは現場担当者として計画して提出しておくべきでしょう。その提案を認めるか認めないかは、組織の問題なのですね。











by islandcenter | 2018-06-28 06:46 | SUSE | Comments(0)