SUSE Linux 15 YaSTの基本 (openSUSE Leap, SLE)

SUSE と言えば YaST

SUSE の基本的な管理ツールと言えば YaST、YaST と言えば SUSE Linux と言われるほど、SUSE Linux の管理者にとってシステムのインストールから初期設定まで "Yet another Setup" な目的の "Tool" です。SUSE Linux ではインストーラ自体が YaST であり、インストールしてまず行う初期設定は全て YaST で行えます。





YaST は初期設定だけではなく、パッケージのインストール、削除、ネットワークの設定、ネットワークサービスのインストールから調整、システムの基本設定の変更、云々まで、ほぼありとあらゆる SUSE Linux の管理に使える萬金丹のようなGUIのツールで、YaST だけで、システムの主な管理業務の80%位は行えます。

また、GUIが使えない環境でも CUIで利用できるテキスト yast があり、カーソルキーなどの簡単な操作でGUI版と同じ目的を達成できます。

私の様に "vi かぁ、昔つかったなぁ" 程度のエンジニアでも、複雑で多くの設定や面倒な変更作業を一括して処理してくれるスイス製ナイフの様な SUSE Linux の基本ツールです。

ここでは、「YaST で何ができるの?」を中心に YaST の主な機能を紹介します。

- GUI 版YaST の起動 -

GUI 版 YaST を起動するには、root でログインしたコンソールのデスクトップの YaST アイコンを開くか、root でログインした リモートなどのXサーバーのテキストコンソールから

# yast2 &

を実行し GUI を起動します。YaST のアイコンメニューは全てシングルクリックなので、ダブルクリックしないよう注意してください。

なお、一般ユーザで YaST を起動するには root 権限が必要ですから、 su して yast もしくは yast2 & を起動します。デスクトップアイコンをクリックすると root パスワードを聞いてきます。

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- テキスト版のYaST -

テキストコンソール、あるいはリモートテキスト端末から

# yast

を実行します。Tab, 矢印キー, スペースキー, Alt+ショートカットキー, Enter キーなどでメニューを選択し、チェックし、実行します。恐らく、IPを固定するために一番最初にお世話になる画面です。軽量なので、通信状態が悪いリモート環境や、テキストコンソール、軽いのでちょっとした変更などによく利用します。

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- YaST メニューの追加 -

通常は YaST メニューの主なメニューは初期インストールされますが、滅多に利用する事がない項目ではアイコンがない場合があります。

YaST にメニューアイコンがない場合、 YaST > Software Management から "Search" ボックスで "yast2" を検索し、チェックしてインストールします。yast2-trans-xx は、各種言語のメニューなので、en_US, en_GP, ja 以外はインストールする事はないでしょう。デフォルトでは en_US です。日本語をデフォルト言語にすると、「なんだかなぁ」な日本語メニューが出てきます。

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- ネットワークの設定 -

System > Network Settings からインストール直後のデフォルト DHCP 設定を固定アドレスに変更します。インストール直後のランダムなホスト名も、ここで変更します。よく Routing の部分を忘れやすいので、注意が必要です。

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SUSE Linux (SLES12)  YaST で固定 IP アドレスの設定をする


openSUSE Leap 15.1 からはデフォルトの設定方法が変わりました。

openSUSE Leap 15.1:ネットワークの設定はYaSTではなくアプレットで


- システムプロクシの設定 -

YaSTでプロクシの設定を行います。インストーラではプロクシ設定がないので、プロクシ必須の環境ではインストールはどこかオンラインの経路を使うか、オフラインインストールを行ってから、プロクシ経由を設定して、サブスクリプション登録とYOUでのアップデートが必要です。
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- Product Registration (openSUSE Leap にはありません) -

SLE の場合、サブスクリプションを購入した時のメールアドレスと登録コードをセットします。SLE の購入したバリエーションのリポジトリが追加されます。

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- YOU (YaST Online Update) -

YaST オンラインアップデートです。デフォルトでは、全てアップデートを行います。運用するアプリケーションに不都合がない様に「アップデートしない選択」も出来ます。

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※ YOU(Yast Online Update) を使わず、全てのパッケージをアップデートする場合、yast で操作するのは面倒です。 zypper dup コマンドで全てアップデートを実行します。ただし、SUSE 12 以降、ルートパーティションが BtrFS です。上書きではなく Copy On Write なので、空き容量を充分確保してから実行します。

- パーティションの作成、削除、マウントの設定 -

Practitioner です。空きディスクのパーティション作成と削除、サイズの変更、フォーマット(SUSE 15 ではデータパーティションは XFS が標準)、 fstab の書き換えまで、この画面で「準備」され、 "Finish" で執行されます。 Finish するまで、全てキャンセル可能です。

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SUSE Linux 「難しい、複雑を簡単に」YaST によるパーティション管理



- ブートローダーの修正 -

ブートローダーにカーネルパラメータを設定したい場合や、 標準カーネル/XENカーネルをデフォルト切り替えしたい場合などに使います。

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- パッケージの検索とインストール、削除 -

YaST のパッケージ管理は、1ホストで1セッションしか利用できません。この機能を立ち上げた状態で zypper や rpm を使うとエラーになるでしょう。パッケージDBがロックされるため、二重起動はできない様になっています。ダブルクリックしないよう注意して起動します。

YaST (yast2) による SUSE Linux のパッケージ管理, インストールと削除


小さなパッケージの場合

Software Management からパッケージをインストールします。小規模なパッケージの場合 "Search" ボックスから検索してインストールします。

※ 他に依存性のあるパッケージがある場合、全てインストールされます。

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パッケージパターンによる検索

パッケージパターンがある場合、 View > Pattern を選び、”Web LAMP" や KVM ハイパーバイザーなどの大型パッケージをインストール、削除する場合に使います。

※ 他に依存性のあるパッケージがある場合、全てインストールされます。

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ネットワークサービスのインストール

DNS や Samba、Squid、HTTP サービス、NTP と言ったネットワークサービスは、YaST > Network Services > yast2 の"インストールしたいアイコン" を選ぶと自動的にインストールされ、設定のためのウィザードが起動します。指示に従ってインストール、ウィザード内でブート時に自動起動を指定すれば、インストールから基本設定、起動まで自動的に設定されます。


速攻 1分で DNS on SUSE12 by YaST(YaST で DNS のインストール)


※ 依存性のあるパッケージがある場合、全てインストールされます。

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パッケージの削除

パッケージの削除は、検索したパッケージを右ボタンで ”Delete” することで削除ができます。その際、依存性のあるパッケージも削除するか、残すかのダイアログが出てきますので、よく注意して削除します。この時点では、依存性のチェックだけで、最終的に "Accept" する事でパッケージデータベースから削除されます。

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- リポジトリの管理 -

リポジトリの管理画面です。アクティベーションすると、SUSE 本家のリポジトリが登録され、優先的に使用されます。
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- sysconfig Editor -

SUSE ではあまり使いませんが、/etc/sysconfig を修正するエディタです。細かなチューニングが必要な時に使います。マニュアルによると /etc/sysconfig テキストファイルを vi などで修正してはいけない様なので sysconfig Editor で修正するのが基本です。シングルユーザモードに切り替えて sysconfig Editor を使って修正します、とマニュアルにはあります。

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- ネットワークサービスのインストールと管理 -

インストール済のネットワークサービスの詳細設定を行います。変更して保存すると、自動的にサービスが再起動します。

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SUSE Linux (SLES12) で apache2 HTTPサーバー と PHP スクリプトのインストール


- ユーザの管理 -

ユーザ、グループの管理を行います。GUIなので、沢山のユーザを管理するにはスクリプトを工夫した方がいいかもしれません。

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- Snapshot の管理 -

SUSE Linux 12 (SLES12) 以降のBtrFS のスナップショットの管理を行います。

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SLES12が採用した btrfs, snapper を使った Snap Shot



- システムログのチェック -

あまり使いませんが、システムログのチェックもできます。

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- supportconfig によるサポートデータの生成とアップロード -

テクニカルサポートリクエストを行うための、supportconfig ファイルの作成と、サポートへのアップロードです。supportconfig スクリプトで作られたファイルは、個々に取得して、各サーバーの設定を管理する目的でも使えます。定期的に実行して保存しておくと便利です。

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SUSE Linux の設定内容を一括して取得する supportconfig





- サービスの管理と、起動モード(System Target)の設定 -

起動時の Default System Target (テキストログインコンソールかGUIログインコンソールか、etc)を選択できます。また、各種 systemd のサービスの自動起動、停止、再起動をここで行う事が出来ます。

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全ての機能は紹介していませんが、これで大体 YaST で SUSE Linux (openSUSE Leap 15 , SLE15 SLES/SLED) のインストールからメンテナンスに必要な作業が充分行える事をご理解いただけると幸いです。YaST 全体の操作感はこちら、音出ます。



SUSE Linux の管理作業は 「YaST に始まり YaST で終わる」が基本です。他のディストリビューションから学んだからと言って、変に知ったかぶりをして、これだろうという設定テキストを直接編集すると、パッケージの整合性や、設定の整合性が壊れてしまう場合があります。

このファイルの vi での直接編集は重要か、影響が大きいかを判断して実施すべきです。明示的にコマンド操作がナレッジベースやマニュアルにある時以外は YaST を使うのが安全です。

SUSE Linux Enterprise 15 (SLES15) のインストール
https://islandcnt.exblog.jp/238668681/

openSUSE Leap 15 Install : インストール
https://islandcnt.exblog.jp/238548280/

SUSE で 1 Click インストールができない場合、YaSTにないメニューを追加

第7章 インターネットからのパッケージのインストール

ユーザアカウント名は8文字以内にすべきか?ユーザの命名規則の理由と対策

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SUSE Linux: YOU(YaST Online Update) によるアップデート

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How to install samba on SUSE Linux Enterprise 15 (SLES15) インストール




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by islandcenter | 2018-09-15 15:20 | SUSE | Comments(0)