2019年 06月 04日
初めての Linux, openSUSE Leap を Hyper-V で動かす。
ドイツの SUSE 社は、米 RedHat が IBM 傘下に入ってしまったため、 2019 年現在、世界最大の独立系のオープンソースソフトウェア企業となりました。かつては Novell 傘下だったり、Attachemate, Micro Focus などから出資を受けていましたが、現在はヨーロッパ・スウェーデンの投資組合、EQTのまとまった出資を受けた世界最大の独立系 OSS ソフトウェア企業です。SUSE Enterprise は有償 Linux のディストリビューションの中では世界で約 30% 程度のシェアがあるようです。openSUSE Leapは、主力製品、SUSE Linux Enterprise のいわゆるデチューン版のようなものです。
SUSE Linux という言い方は誤解を呼ぶかも知れません。SUSE が関連する Linux のディストリビューションには SUSE が後援する openSUSE と呼ばれるシンプルで無償のコミュニティ版と、エンタープライズ向けのバリエーションが豊富な SUSE Linux Enterprise (SLE) と呼ばれる有償版の二つのディストリビューションがあります。SLEは、SLES(Server)はじめ SLED(Desktop)から、SAP専用、大手クラウド事業者用など、数々のバリエーションに分かれています。SLE 15 より、openSUSE は SLE のコードを基に、テクニカルサポートやプロプラエタリなパッケージ、エンタープライズ向けのハイエンドな機能を削除して、インストーラをコンパクトに、無償化したディストリビューションが openSUSE です。
- アウトバーンの国、ドイツ製という事もあり、堅牢性、安定性はずば抜けている点。
- YaST という Linux 知らずの初心者にもベテランにも取っ掛かりの良い設定・管理ツール。
- モバイル環境から一般的なビジネス用途、サーバー用途にも使える高い汎用性
に特徴があります。また、「比較的新しいハードウェアでも問題なく動く」と割と評判はいいようです。2019 年5月現在、 openSUSE Leap は 15.1 が最新版です。SUSE Linux Enterprise は 15.1 がリリースノートで発表されていますが、まだ公式に入手できるのは SLE 15.0 が最新版の様です。openSUSE には openSUSE Tumbleweed と呼ばれるローリングリリース版と、安定版の Leap の二の種類があります。Tumbleweed は openSUSE/SLE の開発用テスト版の様なもので、初心者には向いていません。初心者がちょっと入門で Linux を触ってみたいのであれば openSUSE Leap 版を使ってください。わざわざ初めての Linux に、openSUSE Tumbleweed を選んでチャレンジして、Quita なんかで「openSUSE はバグだらけで使い物にならない」とボヤいて諦めるチャレンジャーさんが大勢います。そういう方は、是非バグ情報を openSUSE の開発者向けコミュニティで元気よくボヤいてください。自らソースコードを弄って改良すれば Leap 版にいずれ反映されるでしょう。初めての openSUSE は openSUSE Leap を選ぶのが定石です。--ちなみに SLE (SUSE Linux Enterprise)については、無料アカウント登録すれば、60日間の評価用サブスクリプションコードとインストール用のメディアを入手できます。SUSE 15 より openSUSE Leap 15 --> SLE15 へのアップデートがサポートされました。ここでは、コンパクトで無料、手軽に利用しやすい、2019/6 現在、最新の openSUSE Leap 15.1 について説明します。
openSUSE/SLE を特徴づけている機能が YaST(Yet another Setup Tool) です。そもそも openSUSE/SLE のインストーラ自体が YaST の機能の一部です。
ほとんどの Linux の管理を、このツールで行う事ができます。おかげで古本屋で買った時代遅れの Linux/Unix 管理者向けのアンチョコ本とはオサラバできます。 まず、SUSE Linux では、YaST で80%の管理、運用を行えるため、他のディストリビューションの様に、コマンドラインのヘルプや vi エディタと闘う事がありません。ある意味では Linux エンジニアのスキルキラーの様な高度なツールです。 おそらく Windows ユーザが初めて YaST に触れれば、驚くほど、キーボードタイプが少なく、マウス操作だけで多くの作業ができる事に気が付くでしょう。他のディストリビューションから乗り換えてみると、こんなに便利なツールはないのか、と思うはずです。 YaST自体はオープンソースなので、Oracle Linux などでもオプションとして用意されており、互換性がある CentOS の管理者さんが、強引に突っ込んだら「動いた」そうです。海外の Ubuntsu のフォーラムに "Ubuntsu で YaST を動かす方法はないのか" という書き込みも見たことがあります。
SUSE Linux 15 YaSTの基本 (openSUSE Leap, SLE) https://islandcnt.exblog.jp/238758768/
また、GUIが使えない、貧弱なWANのネットワーク越しでも、同じ機能をメニュー形式で使える CUI 版 yast コマンドもあります。ほとんどの操作を TAB, やカーソルキーで操作できる優れものです。 軽量なので、ちょっとした変更をしたい場合によく使います。 Windows は知っているけど、初めてだけど、少しは Linux も知っておきたいという程度からの、入門者には実に便利で「使えるツール」です。
openSUSE Leap 15.1
ダウンロードリンクには、DVDの ISO イメージ版と、ネットワークインストール用の二つのメディアがあります。ネットワークインストール版は、最新のパッケージがインストールされる事。ダウンロードサイズが小さい事がメリットですが、インストールがオンラインで行われるので、私の環境の様にインターネット回線が弱い場合、インストールに却って時間がかかったり、途中で止まってしまい、やり直す事も良くあります。ネットワーク版は、私は使ったことがありません。という事もあり、何度も練習するには、DVD版の ISO ファイルを一つ、ダウンロードしておく事をお勧めします。
手元のノートPCには Windows 10 Pro x64 には Hyper-V が用意されているので、ここでは Hyper-V を使って openSUSE Leap 15.1 をインストールしてみました。SUSE は Novell 傘下の時に、Windows と Linux の相互運用について協力体制を取りました。そのため、多くの Linux ディストリビューションの中で Hyper-V 上での認証された Linux の最初のディストリビューションです。という事で Hyper-V はもちろん、Asure 上で最も最適化されたバリエーションを用意しています。ここでは Hyper-V そのものの詳しい説明は割愛します。Hyper-Vは有効化しておきます。Hyper-V Manager から「新しい仮想マシン」を作成します。1G バイトの仮想メモリ、 16Gb の仮想ディスクがあればとりあえずインストールできます。ウィザードの中で数値を適当に設定して進めます。作成が終わったら、仮想マシンに接続して、「起動」します。インストールソースに DVD ISO を指定したので、インストーラが起動します。F2キーを押すと、言語設定リストが出てくるので、どうしても「ブート画面からニホンゴじゃなきゃ嫌だ」という場合は、F2キーから「日本語」を選んでください。openSUSE でサーバー運用する場合、日本語のドキュメントや、詳しい情報が少ないため、私の場合、英語でインストールしてから、第二追加言語を日本語にしています。SUSE Linux Enterprise Server (SLES) の場合、基本的にサーバー運用で、ヘルプ情報がほとんど英語になってしまうので、私は第二外国語で日本語フォントを入れる以外は殆ど英語版で運用をお勧めします。変に日本語のメッセージやログ、ダイアログが出ても、意味わかりませんからね。デスクトップを使ってみたいのであれば、日本語でインストールすると良いでしょう。
ここでは、初めてインストールする方に向けてポイントだけを説明します。実際のインストールの流れは、別記事にまとめてあります。そちらをご参考下さい。
openSUSE Leap 15 Install
15.0 > 15.1の差分として参考にしてください。
openSUSE Leap 15.1 インストール
openSUSE 15.1 のインストールの全体の基本的な流れはこちらの動画(音出ます)
Web LAMP を使いたい場合のインストール手順はこちら(音出ます)。 パーティションは分けてみました。
実際、OSのインストールから、Web Server の立ち上げまでのほとんどの作業を、マウスクリックで行える事に気づかれたでしょうか。DVD.iso のフルインストール版(3.7GB)を使ってインストールする場合、私はオンラインのリポジトリは使いません。すごく時間がかかるし途中で止まってしまう場合があります。
※ ファイルコピーの途中で止まってしまう場合があります。単に時間がかかっている場合もありますが2~3分待っても進捗しない場合があります。もう一度やり直せばいいだけなのですが、パーティションをフォーマットするので、本番環境の場合は、大事なデータは事前にバックアップしておきます。
openSUSE Leap のデスクトップは KDE を選ぶ人が多い様です。SUSE Enterprise Linux Server(SLES) は gnome のみです。私は SLES に合わせて使うので openSUSE をインストールする場合も gnome デスクトップを使います。どちらがいいのかは好みの問題です。「サーバー」を選んだ場合はデスクトップ環境がインストールされません。YaST の GUI 版を使うため、初めて SUSE Linux を使う場合も、本格的にサーバー化したい時も、 KDE か gnome デスクトップを選んだ方が良いでしょう。
インストールの途中で、ネットワークの設定はできません。デフォルトで DHCP です。また、コンピュータ名はランダムな名前が与えられるため、この二点を最初に修正します。YaST > System > Network Settings の中で、ホスト名、固定IP/DHCPの設定ができます。
※ openSUSE Leap 15.1 よりネットワーク管理が YaST(Wicked) ではなく、モバイル環境を考慮してデフォルトでデスクトップのアプレット(Network Manager)から設定する様に変更されました。もちろん従来の YaST でも設定できます。私はモバイル環境で使うつもりがないので Wicked に変更して使っています。openSUSE Leap 15.1:ネットワークの設定はYaSTではなくアプレットで
openSUSE Leap 15.1 では 15.0 とはネットワーク設定のデフォルトが異なります。(音でます)
YaSTによるネットワーク接続の設定
YaST のネットワーク設定で、 hostname を設定する箇所があるので、ホスト名を任意に変更するには YaST のシステム > ネットワーク設定から変更します。こちらの動画では、一つ古いバージョン、 openSUSE Leap 15 のインストールから、HOSTNAME の設定、ネットワークやNTPの初期設定を説明しています。(うるさい音出ます)後半1/3あたりから、初期インストールの「その後」の作業の様子をキャプチャしました。
さて、そうこうしているうちに openSUSE Leap 15.1 がインストールされました。(やっぱり Hyper-V は KVM に比べて遅いなぁ)ここでは gnome デスクトップですが、検索ボックスから "yast" で検索すると、YaST アイコンが出てきます。一般ユーザでログオンした場合は、root パスワードが必要になります。それでは始めましょう。 LibreOffice もインストールされます。日本語入力もできました。Windows でも Mac でも Linux でも使える無料のオープンソース、LibreOfficce と GIMP は最強の組み合わせです。
今回は 「Hyper-V で使ってみよう」の提案なのですが、実際にはベアメタル環境やコンソールを繋がないサーバー運用もあるでしょう。 Windows 環境から openSUSE/SLE を管理するのに便利なツールを紹介しておきます。
Linux 管理者が持ってると便利な Windows 用ツールとは
個人的には movaXterm と winSCP があれば、おおよその作業は問題ありません。タマに putty と xLaunch を使う程度です。
これらを手元の Windows ノートブックに用意すれば、どこでも困ることは殆どないでしょう。
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さくらのVPS カスタムOS「openSUSE Leap 15.0」「FreeBSD 12」提供開始のお知らせ
一般的ではないのですが、ビジネス・エンタープライズ向け Microsoft Azure などの海外の ISV では、普通に SUSE Linux Enterprise が対応しているようです。SLES の場合は、専用のバリエーションがあるので、それを使う事になります。もし、openSUSE についてもっと情報が欲しい方は、コメント残してください。今後のネタにしてみます。