202x 年 Windows 最期の日

※ あくまでフィクションです....

『米国 Microsoft 社は 202x 年 x月 x日 、Windows10 の今後の開発スケジュールとサポートについて、Windows の開発は終了し、202z 年 z 月末をもって、セキュリティパッチなどのサポートも終了することを発表した。あわせてWindows 関連の従業員3万人の解雇と、 付随した Windows 関連の他社への売却も含めた分社化を検討している事も発表した』

Windows の「最期の日」が発表されたのだ。

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Microsoft Windows は 1985 年に発表され、ごく初期のバージョンは全く注目されなかった。1991 年に発表された Windows 3.1 は成功をおさめ、1995 年に発表された Windows 95 は大ヒットした。その後、Internet Exploroer が Windows に標準搭載されると、「インターネットに繋がる全てのデバイスは Windows」と言われるようになった。

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その後、Windows は DOS ベースのカーネルから、Windows NT のカーネルに移行し、 2001 年に発表された Windows XP でその頂点を迎えた。

しかし、Windows Vista の失敗、登場が早すぎたタッチパネル風の Windows 8 の失敗の後、「最後の Windows」 と言われた Windows 10 が 2014年の登場でひとまず盛り返したものの、再びその勢いをITビジネスで取り戻すことはなかった。

Windows の最大のライバルは、他のPC用システムソフトウェアではなく、言うまでもなく、スマートフォンや低価格タブレットなど、異なるプラットフォームの普及である。

Instagram の様に、Windows 用アプリケーションはあっても投稿の機能がないなど、既に、ネットサービスの主流は、Windows ではなく、スマートフォン、タブレット向けサービスに移行しており、Windows は天井桟敷に居場所を見つけていた。

Windows 8 の MetoroUI は一般的な PC ユーザにとって「早すぎた登場」であった。が、デジタルコンシューマにとっては魅力がなかった。また Windows 10 ベースの Windows Mobile の失敗と撤退、すなわち Symbian も Nokia の買収も含めてスマートフォンビジネス上の買収戦略の失敗も致命的だった。「タッチパネル風」を謳った Windows 10 S Edition も、一定の操作で通常の Windows として使えるなど、中途半端に終わった。Microsoft の Windows マーケティング部門は Windows RT の失敗を忘れていた。

デザインはタッチパネル風であっても、ほとんどのモバイル PC のディスプレイがタッチ対応していなかった事に Microsoft Windows のチームメンバーは誰も気が付かなかった。

さらに、Windows 10 をモバイル化して、十分なパフォーマンスを出すためには、最低でも Intel Core i5 以上、メモリ8Gb、128Gb のストレージが必要だった。この仕様を満たすには、最低でも10万円程度の出費が求められ、他社の低価格タブレット端末の倍以上の費用がかかったことが 「Windows 10 は果たして出費に見合うか」という疑問が、IT マネージャや、ネットを駆使することに慣れてしまった消費者離れを呼んだ。PC メーカーも Celeron などの低価格の CPU と 32Gb のストレージを搭載したタブレットやクラムシェル PC をラインアップに加えたが、32Gb のストレージでできる事はブラウザでテキストページを読む程度の事しかできず、動画視聴どころか Windows Update すらできないケースが多かった。

キーボードのない Surface RT の CM を見て惹かれた消費者はいても、使い慣れたアプリケーションと本当に毎日の生活には使えないアプリしかない高価なタブレットであることを知ると、Surface RT には誰も見向きをしなかった。

更に 2020 年、世界を震撼させた「コロナ禍」が、 Windows 10 の将来に暗い影を投げかけた。多くのオフィスワーカーのみならず、子供の教育からパートタイマーの主婦の副業まで、オンライン化を要求された。この惨禍の時期、どこの家庭でも 「家族全員の Windows10 を快適に動かす環境」の出費はあり得ず、多くの消費者の興味は、他の低価格なプラットフォームのタブレット環境へと移った。

Windows10 の目玉の一つであるオンラインストレージの OneDrive も、Google や Apple, Dropbox などの強力なライバルの後塵を浴びた。

コロナ禍の最中、Windows10 で一番問題となったのは、重く、しかも頻繁に行われた 「Windows Update の問題」が挙げられる。Windows Update はあまりに頻繁に行われ、かつ仕事やオンライン授業を中断するための時間がかかり、インターネットに大量のパケットを要求した。「PCとインターネット接続サービスへのパケット代の投資は Windows Update の為にある」という奇妙な囁きが、消費者同士の SNSで拡散された。

あまりに Windows Update の重さと、通信コストの高さ、時間のかかりすぎに呆れたモバイルワーカーやオンライン授業を受ける子供たちは、時間がかかりイライラするアップデートの間に低価格の Chrome OS や Android タブレットで、Youtube を見たり、 Twitter のサービスで時間をつぶしていたのである。そして消費者は学んだのである。「Windowsは使えない」と。

「午後からは天気が良くてベランダで PC の Wifi のスィッチを入れたらいきなりアップデートが始まったのよ。おかげで日が沈むまで、何も仕事ができなかった。iPad でオンライン会議には参加できたけど、結局その日は Windows Updateで何もできなかったの。何のための PC なの? iOSなら10分で終わるのに...」

「アップデートが終わるまで3時間待ったけど、何度も再起動した最後に『元に戻しています....』って? 頭に来たわ!」

「コロナ禍で分かったのは、Apple Store や Google Play には大抵、銀行振り込みから毎日の資源ごみ回収まで、日常の生活で使えるアプリケーションがあった。なのに Microsoft Store には人込みを避けるためのリモートで使える大手銀行の振り込みのアプリケーションすらなかった事だ。これには驚いた。Windows10では、銀行の残高を調べるだけでも、スマートフォンが必要なのだ。 Android タブレットがあればいい。手元の Microsoft Store には、ゲームとニュースと天気予報のアプリしか使えるものはないからね」

「水曜の午前中にコンピューターの電源入れてアップデートが始まったら、ラッキーぃって思っちゃう。おかげで、一日仕事さぼってタブレットでSNSチェック。マネージャの顔見て『あ、あいつも始まったな』って気が付いちゃうし。5時半に『お先にぃ』って言っても誰も文句言えない雰囲気だなってミンナ解ってるンだ」

「パソコン? 一応あるよ、普段使わないけど、プリンタと一緒にクローゼットに仕舞ってる。5年くらい前の機種かな。年賀状印刷の時に便利だよね。親戚でも遠いところだったり、付き合いの薄い親戚や世話になった先生には紙の年賀状送るし。後は スマホから SNSで『あけおめ!』で終わりでっしょ、普通...」








最大のライバル Apple は手ごろな価格の iPhone SE や、iPad の低価格版を販売し、モバイル、テレワーカー、教育関係者から大きな支持を得ていた。これらは、軽量で低価格でも快適に作業ができた。

かつて "Wintel" と呼ばれた Windows の最大のパートナーであったインテルは、既に Windows プラットフォームに見切りを付けて、高収益が得られるサーバー用プロセッサの販売に力を入れている。一方で、汎用PC用環境では成長の余地がある Linux デスクトップ関連の企業や、Android のx86 化での Google との提携、Apple のハイエンド Mac への協力など、他のプラットフォームへの積極的な投資や支援を始めている。ただ Intel の x86 ビジネスがサーバー向けにしか将来性を感じない。 Intel は先手を打って、英 ARM 社との技術提携を表明している。

ただ、これらの いわゆる "GAFa" 企業も、プロセッサやサーバーハードウェアを自社開発しているので、Intel にとっては浮かれている相手ではない。

一方で PC を開発、販売するハードウェアベンダーにとっては、薄利多売でも PC が売れればよいのであり、上に Windows が載っていようといまいと関係ないと、しばらくは静観するだろう。CPUは別に intel x86 でも ARM64 でも構わない。タブレットやクラムシェルPCで、Android が動こうが、ChromeOS が動こうが、台数が掃ければよいのだが、ハイエンドの高額なPCの売れ行きに影響するうまい汁は吸えなくなるところが出てくるだろう。

さて、Windows をスピンアウトさせるマイクロソフトにとって Windows10 は何を意味するのだろう。一言でいえば、既に「Windows は莫大に金がかかるだけで卵を産まない老いた雌鶏」である。Windows10 には、様々なメジャーアップデートバージョンが存在していたが、既に消費者にとって全てメジャーアップグレードは無料だ。

かつては Windows のメジャーアップデートがある度に「有償のアップデート版」が存在していたが、Windows10 より「アップデートバージョン」の開発コストに対して、膨大な数の利用者への見合わないセキュリティパッチや互換性の検証が発生するだけだった。

また、21 世紀の Microsoft にとって最大の収益源は、Microsoft Azure と Office 356 のサブスクリプション収入である。Microsoft は .Net 開発環境の mono xamarinをや GitHub を買収し、Windows Azure を Microsoft Azure と名称を変更し、一般コンシューマーが気が付かない分野では、既に堂々たるオープンソース企業である。また、Office 356 も、Linux や Android 、iOS などの他のプラットフォームに移植されて、サブスクリプション購買も順調だ。ただ、長年のプロプラエタリの宿敵のライバルだった Microsoft がオープンソースエンジニアの『心を買う』事ができるかどうかは未知数だ。

Microsoft は、「ユーザは Windows を使いたいのではない。アプリケーションなのだ」

という、創業時の発想に戻ろうとしている。Microsoft が Windows をスピンアウトさせる日がいよいよやってくる。ユーザにも見放された Windows10 , その最期の日はやってくる。

※ あくまでフィクションです....







by islandcenter | 2020-06-05 12:14 | 雑文 | Comments(0)