Apple M1 の成功は ARM の PC 自作機の夢を見せるか?

Apple silicon M1 の衝撃は

「組み込み SoC でも、ちゃんとデスクトップアプリケーションが動く」

という点なンですね。

ARM といえば、低消費電力、低パフォーマンスの組み込み機器向けのプロセッサ、というイメージが強かったのです。それが、ごく普通のラップトップや Mac mini の様な小型デスクトップで Intel の Core i7 並、それ以上のパフォーマンスを出している、という点に驚かされている訳です。

「携帯電話程度の ARM アキテクチャで Final Cut Pro が Intel Core i7 並に動く」

となると、長年 PC をあつかってきた、PC ジャンカーとしては、

「じゃ ARM の自作 PC 市場はどうなのよ?」

という疑問がフツフツと沸いてくるわけなんです。

ーラズパイほぼ一択の ARM 市場ー

で色々調べたら、 ARM ベースの「自作の世界」というのはあるにはあるンだけど、ほぼ Raspberry Pi か、その他マイナーなワンボードコンピュータキットがあるだけで、いずれも IoT 機器のベースとなる極低消費電力、最低機能のワンボード低スペックのキットぐらいしか見つからないンです。

折角 SUSE が SUSE Enterprise for ARM (SLES ARM)の様な、ディストリビューションを提供していても、これだけ高機能なLinux ディストリビューションを動かすだけの お手軽高性能なハードウェアプラットフォームがない。

多くの Raspberry Pi のインプレッションを探してみると「デスクトップ用途ではやっぱり重い」とか「パッケージの導入には時間がかかる」とか、「使えるけどネガティブ」なインプレッションしか見当たらないのが残念なのです。最近では USB 3.0 搭載のラズパイもあるので、Samba にも使えそう、みたいなインプレッションがありますが、それ以上はない。

あくまでもラズパイは「教育用」であり、「組み込み用途」にも使えるキットなんです。

ーメモリは? 選べるマザーボード、ソケットやスロットは? 電源やストレージは選べるの?ー

ARM アキテクチャで、今までの感覚で、メモリや電源、ストレージを選べる「自作の世界」はかなり制限されているンですね。 Apple M1 も、ユニファイドメモリで、M1チップの中に DRAM が組み込まれている。

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GPUも内蔵しています。メインメモリ <ー> GPUのマザーボード経由のデータ転送は必要ない。CPU はマザーボードのクリスタル・クロックの何倍かの倍速クロックで動くのですが、一般的なマザーボードの様に CPUソケットの外にあるメモリスロットとは、マザーボードクロックに制限されたクロックスピードで転送されます。しかし CPU コアと同じ SOC 実装されている M1 のメモリは、CPUコアに近いクロックで動く。めちゃくちゃ早いわけです。

つまり Apple Silicon Mac では、後でメモリ増設だとかは出来ないンです。


ー組み込みSoCの悲しさー

あくまでも ARM は開発会社であって、SoC や搭載機器を作るハードウェアベンダーではないというところにカナシサがあるのですね。ARM コアを中心に、どの様なチップセットを設計して搭載するか、あるいはチップセット内蔵の SoC を開発するかは、ハードウェアベンダーの裁量であり、おかげで、Apple M1 のような、省電力で高速メモリ内蔵のプロセッサが搭載できるのです。

おそらく PC-AT の世界で一般的な、電源、メモリソケットなどの規格が採用される可能性はないンじゃないかな?

そういう選択肢があっても、ARM が持つ省電力、低価格、高パフォーマンスを削ぐ事になるでしょう。

つまり、ARM アキテクチャを動かすための、ハードウェアの標準化はないし、あっても ARM アキテクチャを高効率で、省電力で動かす設計、エコシステムの構築が難しい。極省電力の ARM コアを動かして、3.3v 駆動の DDR4 のメモリスロットを4本、隣の PCIe 4.0 スロットに爆熱を出して、大量の電源を必要とする Radion のナンチャラ・グラフィックカードを秋葉原のショップで買ってきて、繋ぐためのハードウェア設計は考えにくいし、だったら電源は最低500Wは必要だね、みたいな。

そうなると、省電力、高効率な ARM アキテクチャと Intel 系 x86-64 との差別化がし難い。

ーそれでも欲しい ARM ベースの「パソコン」ー

Apple M1 が Intel に示したものは「x86-64アキテクチャの限界」なのです。それは、私達 PC ジャンキーもわかっている。だから、ARM ベースの PC が欲しい。まぁ、Microsoft Windows の世界は ARM で散々コケているから期待はしないけど、私達が望むのは、ARM アキテクチャで、一般的な Linux ディストリビューションがや Android や Chrome OS が動き、Gimp や、重たい CPU 処理などができるワークステーション。

あるいは、高速大容量の SSD と大量のメモリを積んだミドルクラス以上のサーバーや、仮想化プラットフォームなのです。そんなシステムが、私達 PC ジャンキーの手元にあればと思うわけです。

10 歩譲っても、GPU とメモリ、ミドルクラスの ARM コアがオンボード化されて、カスタマイズできる M.2 ストレージソケットが付いた Micro ATX ケース規格でATX 電源がそのまま使える様な。あるいは、GPU とメモリ内蔵の ARM コア搭載の マイクロプロセッサ用共通ソケット規格や、共通のバス規格。

そんなマザーボードキットがあれば、オモシロイと思うんですがいかがなものでしょう。

そのためには Intel 以外の「どこか」のハードウェアベンダーが PC-AT 規格のパーツと互換性のある「標準」を作らなければならないわけなんですね。

Apple M1, シリコン Mac は一つの「発明」で、狭い意味でのパーソナルコンピュータの世界での「革命」なんですね。

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準備編

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by islandcenter | 2020-11-23 11:48 | 雑文 | Comments(0)