openSUSE Leap は CentOS 8 に代わるか?

実際、業務に携わっていると使う機会が多いので、慣れってある訳です。

現実問題として、社会人の人生始めた頃は UNIX 系 OS って個人では手が出なくて、ほとんど人生「なんちゃってCプログラマ」から始まった訳です。1990 年代の終わりにノストラダムスの大予言に怯えながら Lindows とか Caldera openLinux などは。値段も安くてPC用の Linux 系OS としては入手性もよく、お遊びで触れる機会がありました。しかし趣味の範疇を超えられず「何それ」「趣味でしょ」で終わったんですね。

そんな中、初めて業務で触ったのが SUSE Linux Enterprise だったので、それ以来、ほとんど SUSE 一色の人生でした。 RHL も触った経験はありますが、正直言って当時の RHL3 あたりは不安定で、SCSI や NIC のドライバのインストールすら苦労する中、同じハードウェアで SLES 9 が何のトラブルもなくスンナリ動くと、やっぱり

「SUSE 凄い」

という事になるんです。

openSUSE Leap は 15 以降、SLE との互換性がグッとよくなりました。メチャクチャ使いやすく SLES 並みに安定しているので、過去あまり好感がなかった openSUSEでしたが。 最近はかなりお勧めです。SOHO や自宅サーバーとしては Leapは 充分使えます。

そんな私でもやっぱりIT技術者の端くれですから、他のディストリビューションも触れなければならない訳です。

という事で、比較対象として SUSE 職人が選んだのが CentOS 8.3 、今、日本で一番メジャーで、しかもサポートが今年いっぱいで終わる悲運の CentOS 8、 ある意味では炎上中の燃えて亡くなる最新版です。さて代替はあるのか?...

まず SUSE 職人が RH 系を突いてイジル訳ですから、好意的な目線ではない事は、お察し下さい。 RH 系ってどうよという事で試練を覚悟です。

-- openSUSE Leap15.2 +KVM 環境でインストール

-- 仮想ディスクは2台

仮想ディスクは二台にしました。シングルドライブでは、運用中ディスク容量が圧迫されると、後で切り直しができません。この十数年、仮想化提案をしてきた長年の経験です。果たしてこのケーススタディでは、CentOS のインストーラはどの様な罠を用意してくれるのでしょうか。25Gb と 30Gb の二台の仮想ディスクを用意しました。

-- インストールメディアは二枚

一枚はブート用、もう一枚はパッケージ用DVDの ISO メディアです。ブートした後、パッケージDVDにマウントを切り替えても、なぜか CentOS のインストーラはパッケージDVDを認識してくれなかったため、初めから仮想DVDドライブ二台の構成です。ベアメタル環境にインストールするには、DVDドライブを二つ用意するか、構内 LAN に ISO を展開した Web HTTP サーバーを用意した方がいいかも知れません。

この辺りは SUSE Linux Enterprise 15.0/15.1 と同じく面倒くさい。SLE 15.2 からは一枚の DVD でインストールできます。

openSUSE 15.x はお手軽に単層1枚の DVD に収まるので、CentOS って図体デカくて何だかなぁ、という第一印象です。

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-- いきなりインストールサマリ

openSUSE Leap 15.x/SLE15x の場合、インストーラはウィザード形式です。ウィザードから最後にサマリーを確認して、内容チェックして「インストール」という流れです。

CentOS 8 の場合、ウェルカムの後、いきなりサマリスークリーンが出てきました。右の下には ”Begin Installation” この画面で全て設定して、後はインストール、設定してしまおうという、ある意味では合理的な作りになっています。SLE/openSUSE の様に、ウィザード形式ではないので、次はヘビが出るか蛇が出るかのような、ワクワク感というか怖さがないので、これはこれで合理的です。

前の画面に戻って設定し直しという事もありません。

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ある意味ではこのスクリーンで完結しているのは合理的なのですが、決してわかりやすいインストーラのメインスクリーンとは言えません。直感的に「何をどうする」かがわかりにくいのです。例えば、インストールに重要なパーティション構成はどこで設定するのか? 初めてこのスクリーンを見た時は凍ってしまいました。

こちらは openSUSE Leap 15.2 のインストールサマリ。難を言えば、サマリのリンクが変更ボタンになっているので、初めてこれ見た人は、戸惑うかも知れません。
緑のアンダーラインをクリックすると、変更できます。

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-- パーティション構成

パーティション構成は”Installaition Destination” から行うンですね。

これがパーティション構成のメイン画面だとは、とてもいいとは思えません。

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どうやら、ディスクアイコンをチェックして、左上の "Done" を押すと次の画面に遷移できるらしいのですが、このボタンが怖くて押せない。ついつい、他の一般的なソフトウェアの UI では一般的な、右下の方面に良くある ”Next” ボタンを探してしまいます。

で左上に "Done" です。マウスを持つ手が迷います。

"Back" もないから戻るに戻れない。何だかカニ籠漁の罠に引っかかったウミガメみたいな気分。戻れないんですよ.....これ、別な設定にしたくても "Done" 押さないと先へ進めない。押して一旦設定するしかない(苦笑...)せめて "Cancel" とか "Back" ボタンがあればいいんだけど、その親切心が欠けている。

「ダーン! やられたぜ」

結局、ディスクアイコンのチェックを外して ”Done” したら、初期状態に戻れましたけどね。分かりにくい。

-- パーティションの作成

結局、ディスクアイコンを二つチェックして、"Done" するとどうやらパーティション構成のスクリーンが出てきました。

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これが全く分かりにくく使いずらい。普通、用途によって、パーティション分けるのが普通だと思うのですが、初期プロポーザルの状態が不明。

パーティションの設定って後戻りできないんですよ。ソフトウェアの設定なら、後でどうにでもなるんですが、パーティションを構成する部分が致命的に分かりにくい。インストールした後は変更できないのですからもう少し親切に作って欲しい。

どうやら "+" ボタンを押して、パーティションを追加していく方式らしいのですが、二つの仮想デバイスのどちらのディスクを指定するには、 "Devices" の Modify ボタンを押して選ぶらしい。が、ここを開くと、デフォルトで二つのデバイスが選択されている。そして割り当てサイズとマウント位置、ファイルシステムを選ぶようになっています。
また、左下の Available Space と Total Space の部分は「使えるデバイスの合計」が表示されているだけで、初めは必死にこれを空中クリックしていました。

ほとんどの CentOS のインストール手順を開設したページでは、この辺、ハショっています。ズルい....

なぜ二つのデバイスが選択されているのか? それはデフォルトで LVM を使えという事らしいですね。このパーティション設定画面を見ているとそのような印象を受けました。ちなみにファイルシステムでは BtrFS は選べなかった。

LVM.... そういえばありましたね。最近あまり聞きませんが。

SLES11 の頃は LVM はもてはやされたファイルシステムでしたが、クラウドストレージだとか、仮想化だとか、最新の SAN ストレージ製品が広く出回っている 2021 年ではあまり聞かなくなった年代を感じさせるストレージ管理技術のような気がします。久しぶりに調べてみたら、ニュースがない。つまり 10 年前のポンコツです。RedHatが CentOS を「金を産まないポンコツ」と呼ぶだけの事はある訳です。最新の技術が使われているわけではなく、すっかりすり減らして「安定した」だけの古い過去の遺産。いや、デプリケートしそうなお蔵入りしそうな技術を中心に RedHat の「後出しジャンケン」でディストリビューションが設計されているんじゃないかと感じます。

やっぱり古い...

慣れもありますが、openSUSE Leap の YaST Practitioner はデバイスとパーティションの関係が見易く分かりやすい。Back ボタンでいつでも戻れる。

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-- ソフトウェアの選択

パッケージDVDが認識できたら、ソフトウェアの選択です。白黒のシンプルな画面。KVM ハイパーバイザーを構成するつもりでチェック付けます。

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実際インストールされたのかどうだかわかりませんでした。virt-manager を起動しようとすると、見つからない、とダウンロードしてくる訳です。なるほど....

インストーラのメインスクリーンの"Begin Installation" を押すと、CentOS のインストーラは「何の確認もなくいきなりインストール」を始めます。いきなりですよ。怒りますよ。ついつい、追加ソフトウェアを選ばすにインストールボタン押しちゃいますよ。確認ないんですよ!

こちらは、openSUSE Leap 15.2 のソフトウェア選択画面です。チェックすると、関連性があるパッケージは自動的にダウンロードインストールされます。インストール後の設定は YaST で行います。

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ーー ネットワークの設定

ネットワークの設定はデフォルトでオフ。ここでONにしてもいいし、最初のログインでオンにしてもいい。Configure を押すと、静的 IP の設定ができます。
ちなみに、NTP は centos のプールに割り当てられます。NTP の設定は、CentOS のみんな大好き vi エディタで変更します。

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-- 問題はインストール後

ここで固まった。次に何をすればいいかわからない。Yet another Setup が分からないのです。

YaST ツールに慣れてしまった SUSE 職人が陥るワナなのです。「詰まったら YaST」という萬金丹に慣れてしまっているので、もうコマンドで設定できません。何しろマウス操作で Web LAMP 導入が5分で完結する openSUSE に慣れてしまうと、テキストターミナルで固まってしまいます。今、何かやりたい事があれば、YaST でメンテナンスのテーマが見つかります。

さて今日は何やる? Yet another Setup ?
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ちなみに Web LAMP のインストールはこんな感じです。


-- openSUSE Leeap は CentOS の代替になるか

CentOS 8 のディスコン宣言以来、CentOS ユーザは何処に行くか、いろいろ世間では予測されているようです。ubuntu が有力だろうとか Oracle はあり得ないとか、立ち上がったばかりの別な RH 系クローンだとかです。いっそ「純潔 RHEL」 を選べと言われて、サブスクリプション費用に詰まる顧客も居るでしょう。

正直言って、ubuntu は、パッケージの操作も、ディレクトリ構成も RH 系とは異なります。使いやすいと評判のデスクトップなら選択肢ですが、CentOS ユーザはサーバとして長期運用しているケースが多いのではないでしょうか。CentOS の良いところは「枯れた技術で作られた」安定性と長期のサポートであると感じます。

openSUSE は RH 系と同じ rpm パッケージで、全体のディレクトリ構成も似ています。せいぜい yum を zypper に読み替えればほとんど困る事はありません。実際に RH 系の文書を読めば、openSUSE への応用は結構効きます。更に YaST はマニュアル要らずのツールなので、RH 系から移行したユーザにとってはパッケージ管理やインストールの強い助けになります。

繰り返し言いたくなります。YaST は強力です。

Is openSUSE Leap Ready to Be the New CentOS?

openSUSE は「勉強になる Linux ディストリビューションか?」 と聞かれれば、「No」です。「Linux って難しそう」な印象を YaST という実に「パコーン!」と便利なツールが窓口広げて「オイデオイデ」しているんです。SUSE 職人が陥りやすい 「YaST 萬金丹」によって、 YaST で出来なければ、調べて vi エディタのコマンドと戦う、という悪い癖がついてしまいます。もし本当に 「Linux を勉強したい」 のであれば、もっと面倒なディストリビューションをお勧めします。S 系の GUI なしの JeOS に挑戦するのがいいでしょう。

ただし openSUSE に問題があるとすれば、日本語情報は、このブログのように「YaSTバカ(自称です)」が書いた頼りない内容のブログや、紹介程度の情報しか見当たらなかったり、役に立ちそうで肝心な事が書かれていない公式マニュアルくらいしかありません。ノベルがやっていた頃の方が SLES のサポートは充実していました。当時の SLES のナレッジの内容が、まだ若かった openSULE ディストリビューションにも応用できました。

また、openSUSE Leapと SUSE Linux Enterprise を比べてしまうと、圧倒的に SLES の性能、信頼性の高さに感心します。また openSUSE Leap のサポートの短さもマイナスポイントとなるでしょう。この差異は実に SUSE 社の戦略です。やっぱりベアメタルサーバー、ハイパーバイザー、HPC、クラウド、SAP の様な業務アプリケーションなどは SLES でね、決め打ちの HTTP サーバや DNS などの枯れたアプリケーションサーバーなどの軽用途や、トレーニング、簡単な検証なら、操作感が同じで無料で使える openSUSE も選べるよ、と言った所です。逆に言えば RedHat にとっては、自社のサブスクリプションを食っていた、長期の無償パッチサポートを謳うクローンは目の上のタンコブ。これを潰して「自社に役立つディストリビューション」を作る。それが CentOS Stream の狙いです。

軽用途であれば openSUSE Leap 15 は CentOS 8 の代替手段になり得る。が、長期サポートや信頼性を得たいなら、RHEL なり SLES なりの有償サブスクリプションを購入すべし、という事です。SUSE は openSUSE Leap 15 で SLE との互換性を作り、ビジネスとして成功しているかは別として、openSUSE を有償 SLE へと誘い込みます。これはビジネスの世界です。

もし、オープンソース、無償の linux のディストリビューションを探しているなら、openSUSE Leap 15 はいい選択肢です。ただし CentOS の代替になるかと聞かれれば、?です。オープンソースとは言え、メンテナンスコストが掛かるし、ビジネスメリットがない限り、投資家は無償のオープンソースにお金は払いません。長期サポートが保証された CentOS の代替となるディストリビューションは、有償 RHEL しかない。

Windows ユーザは常に最新のパッチを当てたがるけれど Linux ユーザは、セキュリティパッチでも当てたがらない、と聞いたことがあります。CentOS の利用者は典型的に後者であるかもしれません。一方で最新の機能を使いたい Linux ユーザもいます。ひどく納得できるご意見です。おそらく SI ベンダーのオススメで入れた CentOS のシステムって、案外と顧客自身でメンテナンスされていないような気がします。

一つ言えることは、IT 業界で無償の「永久保証」とか5年以上の「長期保証」はありえないということです。何がおきてもおかしくない。 数年前の Wintel スタンダードだったPC 業界が一斉にコロナ禍で Chrome Book に舵切るほどラディカルです。

ひどく偏った書き方です。不快に思われたらごめんなさい。







by islandcenter | 2021-03-25 12:04 | Linux | Comments(0)