openSUSE Leap 15.3 リリース、初めての Linux サーバーに最適

openSUSE Leap 15.3 リリース

openSUSE Leap 15.3 がこの6月リリースされました。

openSUSE Leap 15.3 リリースノート

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openSUSE は、ドイツの SUSE 社がスポンサーとして提供する、SUSE Linux Enterprise (SLE)のコミュニティ向けオープンフリー版の Linux ディストリビューションです。Slackware 系と分類されていますが、ほぼ独自進化しているため、"SUSE系" という言い方をする人もいます。ディレクトリ構成などは、ほとんど RedHat 系に近く、パッケージ配布方式も rpm を使います。RedHat 系のドキュメントは割と openSUSE でも応用が利きます。

SUSEからスピンアウトした当時の openSUSE 10.x 時代は、どちらかと言うとデスクトップ向けで、本家 SLE とは微妙に異なるチューニング、味付けでした。 ベアメタルの、古いノートブックで使っていました。SLES から入った私にとっては

「微妙....」

な感じがしたのですが、"Leap42" 以降は、 SLE との融合が図られ、openSUSE 15.x 以降は、ほとんど本家 SLE15.x と違和感なく使えるようになりました。openSUSE Leap 15 以降、何かとテストやトレーニングには openSUSE Leap を使うようになりました。一応、openSUSE はデスクトップでも、サーバーにも使える汎用 Linux ディストリビューションと言う位置づけですが、軽用途であれば SLE の安定感をそのままサーバーとして味わう事ができます。

また、openSUSE Leap 15 以降は、そのまま SUSE Linux Enterprise へマイグレートできるパスが用意されています。いったん openSUSE Leap で実装したアプリケーションサーバーを、そのまま SLE のサブスクリプションに移行して、SUSE 社の公式サポートを有償で受ける事もできます。

同じ openSUSE でも、Factory 版と Tumbleweed 版があり、Factory は軽いテストを通ったチャレンジャー向け開発版、Tumbleweed はプロプラエタリなサードパーティドライバは、まず動かない、最新オープンソースパッケージのローリングリリースで、長期運用には不向きです。何事も新しいモノが好きなヒトには Tumbleweed を好みとする人が多いようです。こちらにまとめています。

openSUSE Tumbleweed を試してみた。Leap とどう違う?

Tumbleweed から SUSE Linux Enterprise (SLE) が研がれ磨かれ、商用版としてリリースされます。SLE のリリース前に SLE のバイナリ互換として SLE から絞り込まれたパッケージを集めたものが openSUSE Leap です。SLE の同じバージョンナンバーの製品版は、 openSUSE より更に厳しいテストやチューニングを受けて、大体数か月後に出荷されます。恐らく SLE 15sp3 は今年後半には発表されるでしょう。

他の互換ディストリビューションと違うのは、ソースコードの互換ではなく、バイナリレベルの互換性で SLE から Leap が開発、リリースされている所です。

2021年6月3日 SUSE Linux Enterpriseとの融合を強化したopenSUSE Leap 15.3がリリース

RedHat が IBM 傘下になって以来、SUSE 社は「世界最大のオープンソース独立企業」という事になっています。まぁ実態は置いといてそういう事です。

-- SUSE Linux Enterprise (SLE) の特徴を引き継いだ openSUSE Leap

SUSE Linux Enterprise が他のディストリビューションと差別化されている点は

1.性能と安定感
2.YaST 管理ツールとインストーラの使いやすさ

の二点にあります。

SUSE Linux Enterprise Server (SLES) の性能と安定性については数多くの実績があり、HPC や金融機関のメインフレームなどの業務用 Linux としての実績は非常に高いようです。また、同じドイツのソフトウェア企業の SAP 製の ERP アプリケーションの唯一認定されたディストリビューションが SUSE Linux Enterprise (SLES) です。

実際、他のディストリビューションでインストールで躓いたり、致命的なバグに悩まされて、「Linux って勉強になるね」というシーンは随分ありましたが、SUSE Linux (openSUSE/SLE) では、まずそういう状況に陥った事がなく、逆に「SUSE って勉強にならないね」というのが笑えない事実です。

昔は RHEL も SAP 認定を取っていましたが、今は IBM 傘下ですから SAP/ERP との棲み分けは微妙なのでしょう。実際に SAP ERP の運用基盤は海外では80%以上 SLES で、残り二割弱が Windows サーバーなのだそうです。日本では逆で SAP on Windows が圧倒的の様です。

数々の Linux のディストリビューションは、公開されたヒトサマのこしらえたオープンソースのコードの寄せ集めである訳で、違いは、パッケージの組み立てと積み上げ、インストーラによる設定とチューニングの違いしかないのかもしれません。特にインストーラはディストリビューションを特徴付ける顔と言ってもいいでしょう。

そこで SUSE らしさを表すものが YaST (Yet another Setup Tool) というインストーラ/管理ツール(群)です。SUSE Linux シリーズには Auto YaST という機能があり、SUSE Linux のインストーラ自体が YaST の一部分です。

openSUSE Leap 15.3 AutoYaST Guide

他のディストリビューションを使ってみての、一番の違いが、インストールに使ったパラメータを修正したいと言うシーンがでは YaST が非常に心強いツールだという事です。これら設定テキストの変更、保存と再起動と言った作業が、openSUSE/SLE ではインストーラと同じスクリーンで行う事ができて、YaST で一貫して自動化されています。

インストーラはウィザード方式で、最後にインストールサマリにある緑色のリンクラインをクリックすると、YaST と同じ設定画面が出てきます。ほぼ、インストールの際の主な設定項目は、インストールした後に YaST で再修正/調整が行えます。

ただし、パーティション構成だけは、インストールした後に変更できません。

このインストールサマリから、インストールが始まります。見逃さないようにじっくり内容を検討してから、インストールを開始しましょう。必要に応じて "Back" ボタンで戻れます。"Install" ボタンを押すと、確認のダイアログが出てきます。いきなりパーティションのフォーマットが始まる他のディストリビューションとは違います。

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ウィザード形式のインストーラで設定できなかった、あるいは間違って設定した項目、追加したいソフトウェアパッケージの選択は、YaST ツールでほぼ同じ画面、UIで変更ができます。

YaST には、X環境で使える、 yast2 と、テキストターミナルで使える yast コマンドの二つがあります。

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あまりにも YaST は便利すぎるので、やっぱり「SUSE って勉強にならないね」と言うのが、"SUSE バカ" を自称する私の実態です。ubuntu や CentOS は面倒くさくて使えない体になってしまいました。YaST については次の動画をご参考ください。

SUSE Linux (SLE15/openSUSE) Yet another Setup Tool YaST の使い方

-- インストールのポイント

-- パーティションの分割と構成

SUSE Linux Enterprise (SLE) と openSUSE Leap のシステムファイルが置かれるルートパーティションは BtrFS です;信頼性と運用上の可用性を求めた結果で、反面、パフォーマンスや容量面でのデメリットがあります。

一方、アプリケーションのデータ領域は、パフォーマンス優先の XFS がデフォルトです。パーティションの構成/設定は、Linux サーバーをインストールする際の、一番重要で、二度と後戻りできない作業です。SLE/openSUSE の Expert Partitioner を使ったパーテション設定はマトリクス形式で直感的に解りやすい作りと表示で操作できます。用途によってパーティションを切り分ける事がインストールのポイントです。

他のディストリビューション(しかも日本だけ特に人気があるらしい)では、このインストールで一番重要な操作が、実に雑に作られていたのをみて愕然としたことがあります。

サーバーとして使う場合、用途によって/var や /home, /srv などを別パーテションとします。HTTP サーバーとする場合、 SLS/openSUSE では /srv/www/htdocs がデフォルトでコンテンツが保存されます。KVM ハイパーバイザーは /var/lib/libvirt の下に、仮想マシンのイメージが作られます。

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-- デスクトップの選択

System Role の選択画面では、サーバー運用する場合でも gnome を選択しています。openSUSE のデスクトップのデフォルトは KDE である、と言う認識が一般的ですが、 SLES15 が、簡易 gnome のデスクトップのみなので、将来有償版 SLES に移行することを考慮すると gnome を選ぶべきだと思います。サーバー運用で、LibreOffice や Gimp が要らないのであれば、削除するだけです。

やっぱり YaST は GUI で使いたいンです。

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-- ネットワークの設定

openSUSE Leap 15.3 のネットワークは Network Manager がデフォルトです。SUSE Linux Enterprise Server (SLES15x) では Wicked がデフォルトです。もし、openSUSE Leap をサーバー運用するならWicked に変更して固定 IP とする事になるでしょう。 デスクトップとして利用するなら Network Manager を使います。

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-- YaSTのメニューがない

YaST から、例えば 「"HTTP Server" をインストールしたい」と言った場合、YaST にその項目、アイコンがない場合があります。恐らく誤操作を防ぐためでしょう。GUI 版 yast2 では1クリックで起動してしまいます。そこで YaST の機能を追加するためには、yast2 or yast を実行して、 > Software > Software Management > "search" ボックスから "yast2" で検索すると追加機能が出てきます。

必要な YaST の追加機能をチェックしてインストールした後、YaST を再起動すると追加アイコンが出てきます。

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ちなみに、パッケージのインストールには、apt や yum に相当する zypper というコマンドがあります。また、パッケージの配布方式が rpm なので、rpm コマンドもたまに使います。zypper は割とよく SUSE 系の解説に出てくるので一応チェックしておいた方がいいでしょう。

まず面倒なので、初心者なら yast から導入/削除することをお勧めします。

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と言う事で、出たばかりの openSUSE Leap 15.3 で、ゼロからインストールから始めて HTTP サーバーをインストールする手順を動画にまとめました。ちなみに、 Leap 15.3 はこのキャプチャ画面を取った時が、私にとって初めて触る Leap 15.3 です。インストーラにあまり変わりがないので、多少バージョンが変わっても違いはほとんどありません。(爆音出ます)




従来の openSUSE Leap/SLE のリリースのパターンから xx.3 はシリーズのほぼ最終バージョンです。大抵 SLE も sp3 で終わり、メジャーアップが出てから sp4 が出てくるようです。来年後半に出てくるバージョンは 16.0 になりそうな予感です。

-- まとめ

商用 Linux の SUSE Linux Enterprise の言わばオープンフリー版 openSUSE Leap 15.3 がリリースされました。高い信頼性と初心者からベテランまで使いやすい YaST ツールとインストール方法の流れを説明しました。openSUSE と SLE は相互互換性が高く、将来 openSUSE から、有償版 SLE へ移行するケースもサポートされています。openSUSE Leap は汎用性が高く、デスクトップでもサーバーでも運用可能で、信頼性が高い SUSE Linux Enterprise から生まれた優れたサーバー機能を持っています。初めて Linux を使うエンジニアからベテランエンジニアまで、比較的多くの利用者層に受け入れられる、詳細で、かつ解りやすいインストーラ、YaST ツールが魅力的です。

はじめて Linux サーバーを使う方にとっては、選択肢の一つとして検討に値します。




by islandcenter | 2021-06-18 16:12 | SUSE | Comments(0)