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限界費用:ポテトフライとクラウドビジネスを読み解く

マクドナルドのポテトのMサイズが100円だったとしよう。その原価はいくらなのだろう、と考えてみました。

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三次産業が生み出す付加価値

一般的には店舗での原価は20~30円だそうで、コカ・コーラなんかの原価は数円だそうです。それに対して、メインメニューのハンバーガーの単価は高く70%近く、ファーストフードはセットメニューで原価の安いモノをセットにしてメインを売る。それで利益を出す戦略なのだそうです。

で、気になるのは、ポテトを作っている農家の出荷原価はいくらか? なのですね。恐らくキロなんぼ。ジャガイモ一個1円もしない。どこかで昔みた記事なんだけど、アイダホ産のポテトだと、マクドナルドのポテトの原価は2セントとかって聞いたことがあります。

なにを言いたいか。

一次産業で生産される製品の単価は安く、利幅も低い。これが二次産業、三次産業へと行くに従って、単価も上がり利幅が大きいという事です。

で、限界費用。経済用語だそうですが、素人の私にはよくわからない。どうやら、今の生産財から+プラスの生産をするために必要な費用ということなのですね。毎日100個の製品を作っている工場で、例えば110個の注文をこなすために必要な追加費用です。

工場の場合、生産に必要な機械や倉庫、工場の敷地に余裕があれば、+10個の需要を満たすために必要な原材料、電気や機械を動かす燃料費、工員の残業費用などの追加費用が掛かります。

これが限界費用。

一般的な二次産業の場合、+ヒトケタ程度の追加需要を満たすために、固定資産に余裕があれば、追加需要のための追加投資はそれほどではありません。限界費用は低く抑えられます。

一次産業の農業の場合、生産量(需要)を10%増やすためには、人件費や肥料代、燃料代だけではなく、それなりの圃場のスペースが必要なわけで、ある程度の投資が必要になります。大体の貧乏農家の場合、圃場(農地)の稼働率は100%です。休耕地があっても連作障害を避けるために休耕させて緑肥を作ったり、雪国の場合は冬は遊休地になってしまう。固定資産を増やさなければ増産は難しい。

つまり、農林業のような一次産業では限界費用は高い。つまり利益率は低い。

では、三次産業として、飲食店の場合はどうでしょう。よほどの人気店でなければ、テーブルが満席になる事はないとしても、プラス10の売上を上げるコストは、原材料費と光熱費だけ余計に掛かります。光熱費は置いといても原材料の食材費は、一次産品、野菜やコメ、肉と言ったところだから、限界費用は安くて済みます。従業員はちょっと忙しくなりますが、アルバイト店員の時給やボーナスをプラスする程度なので、限界費用が高くなるという可能性は低くなります。もっとも、人気店ならば二号店を出したりの資本投下をしなければならないというケースは置いといてですね。

物流の場合は、トラックやドライバーの稼働率を上げて、タイアや燃料代が余計に掛かるだけです。もっとも物流に必要な倉庫、車両の稼働率が100%でなければの話になります。

これが産業構造についての限界費用を考えた場合の収益率の変化です。

クラウドのサブスクリプションビジネスの限界費用は限りなくゼロになる

フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略

さて、私達IT産業にとって身近な存在であるクラウドサービス。

デジタルで流通できる限界費用は限りなくゼロになる、と言われます。

例えば音楽のサブスクリプションサービス。充分なサーバ、通信回線を持った事業者が一つの楽曲を配信するための費用はN回の再生ごとにY円という楽曲使用料を払う、という著作権料の支払いが+10の売り上げを上げるための、限界費用であり、配信される楽曲のデジタルデータはオリジナルが一本あるだけなのです。これをセッセとコピーして売り上げるので、需要増に伴う倉庫スペースの増加もなければ、通信コストの追加も必要はありません。

手持ちのファシリティ、通信容量に十分な余裕があれば、今の十倍のデマンドであっても、楽曲使用料程度の追加コストがかかるだけで、倉庫代も通信費用も追加費用が掛からないし、配信に必要なデータセンターの人件費も同じですから、限界費用は恐ろしく低く抑える事が出来ます。

デジタル化できる商品やサービスの流通は驚くほど限界費用が低く、高い利益をもたらす事が出来るのです。



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IT産業、クラウドビジネスにおける産業構造、ITビジネスの垂直構造化

さて、スタートアップ企業がなんらかのインターネット技術を使ったサービスを始めるとしましょう。先ずは、自社のオンプレミスから始める場合もあれば、AWSの様なIaaSサービスからいきなり始めるかも知れません。

その格納されるデータセンターはどういうビジネスをやっているのか。

まずファシリティとしてデータセンターとなる土地と建物があります。例えば都内の倉庫会社が使っていない余剰倉庫を簡単に衣装替えして、データセンターとして土地、建物を提供する事もあります。

そこにデータセンターサービスを提供するIT企業が、冷房装置や電源装置、通信回線、セキュリティロックなどを提供して、サービス事業者や、エンドユーザ企業などの顧客に「ラックスペース」と電源、通信施設を貸し出すケースがあります。サービス事業者がラック丸ごと借りるハウジングサービスです。

あるいは、クラウドサービス事業者が、ラックに乗ったサーバ本体とハイパーバイザーを所有し、仮想化に必要なソフトウェアベースの CPU とメモリ、ストレージスペースを、ITサービス事業者やエンドユーザ企業に貸し出す場合があります。

いわゆるVPSサービスです。

ここにもクラウドサービスの、一次、二次、三次産業の構造があります。

土地、建物を提供する一次事業者 < データセンター二次事業者、(VPS提供事業者)< ITサービス三次事業者

土地、建物は、一般的な産業構造の一次産業に似ており、ほぼ不動産を主体とした固定資産を貸し出します。土地、建物に余裕がある限り、需要が増えても限界費用は低く抑えられますが、競合他社との競争や、需要の増大によってより良い条件のロケーションを見つけて、土地建物に投資が必要となります。もっとも、土地、建物を提供する側としては、単なる遊休資産の有効活用が目的で、クラウドビジネスに参加したのであって、それ以上の資金を投じてデータセンターという「ハコ」に投資する事は少ないでしょう。

二次産業のデータセンター事業者は、土地、建物、電源や通信回線、ラックや電源、入退室のセキュリティなどに初期投資を行い、一定の黒字化が達成できれば、後は需要の増大に合わせて追加費用、限界費用を抑えて利益を出す事に事業目標を立てるでしょう。

VPSなどのホスティングサービスをするためには、サーバーやストレージなどのハードウェア費用、オペレーティングシステムやハイパーバイザーなどのライセンスコストがかかります。需要が増えれば駆り出すリソースは増えますが、一時的なリソースの追加費用であり、固定資産を降らすことなくサービス需要の増大に対応できます。

一般的には、顧客企業のIT資産を預かるハウジングサービスより、ITサービスとしてVPSを提供した方が、利益率は高いと言われます。42Uラックに、ハイパーバイザーを詰め込んで物理サーバ1台あたり10VPS、1VPS毎に千円/月額で提供すれば、月間40万円以上の売り上げです。1ラック丸ごとハウジングして10万円/月よりよっぽど利益率が高いわけです。まぁハウジングの場合、ロケーションや設備によって価格は異なるでしょう。

その上で動く各サービス事業者の場合は、ピンキリです。需要が全く増えない事業者もあれば、本業のために自社のウェブページやメールサーバーを置いているだけのコストセンターもあれば、SNSの様なトラフィックの増大に合わせて成長する事業者もいるでしょう。後者の場合、限界費用は限りなく低いだろうと想像できます。

Google も初めはオンプレミスから始まって、データセンターにハウジングされ、ビジネスの成長と共にハウジングしていたデータセンターそのものを買い取って、データセンターの自社運用になった、とどこかで読んだことがあります。

Googleの初代サーバを間近から詳細に撮影した写真いろいろ

GAFA が生み出す莫大な利益

マクドナルドのポテトの農家からの出荷原価が仮に2円、自前でビーフとパンズを作り農家が自前でハンバーガーのセットを自前で行う。まぁ現実的な話ではないけれど、農家が漬物を製造して庭先で売る。一次産業から、二次、三次産業までを垂直統合する、いわゆる六次産業と言うのだそうです。うまく行けば利益率は高い。典型的に成功しているのは、ファストフードのサイゼリア。原料の食材も自家生産だそうな。究極の六次産業なんですね・

産業の六次産業化を情報ビジネスに当てはめたのが GAFA と言われるIT大手の戦略なのです。

これらの企業は、データセンターの土地も建物も低コストで調達し、サーバや通信回線までも自社のビジネスに最適化して自社開発して、自社設備、その上で流通コスト、限界費用の極めて低い”デジタルデータ”の販売を行っています。

必要な電力さえも、データセンター内部で調達しています。

全て自社調達なので、固定資産に関わる費用を下げ。限界費用が限りなくゼロに近いデジタルな情報を販売している訳です。

ほぼ費用が掛からず、莫大な利益を生み出す「限界費用0社会」

日本では GAFA は生まれない?

日本にもデータセンター事業者は数多くありますが、残念ながら国内の事業者で幅広く海外にも事業展開できている事業者は残念ながら聞きません。日本国内の需要を提供する、いわゆる「地産地消」「内需」型のガラパゴスクラウドサービスに過ぎません。いくら需要が増えても日本人一億人の需要以上のニーズは生まれません。日本の有名ユーチューバーは今は限界に来ています。日本人しか見ないコンテンツでは限界があります。Mr. Bean の様に言語や文化を超えた笑いでなければ一億人以上の視聴者を獲得できない様に、全世界向けの情報需要を生み出すセンスが残念ながら日本にはない。

逆に、海外のデータセンターの方が価格、品質ともに優れていれば、海外に出て行ってしまう日本の国内事業者もいるでしょう。私達が GAFA のサービスの付加価値に支払う広告費や有償のサービス利益は全て海外の事業者の利益です。

まさにほぼ0コストから莫大な利益を生み出す、東洋のガラパゴス諸島、日本ではやっぱり実現できないのか。問題は海外でも通用するソフトウェアとサービスなんですね。







by islandcenter | 2022-04-06 17:23 | 雑文 | Comments(0)