簡単! Linux で iSCSI で NAS を使う openSUSE Leap 15.4

最近やっと 10GbT ネットワークカードが各社のPCサーバでも標準/オプションで選べるようになり、 CPU 装置本体と外部ストレージの選択肢として ISCSI IP-SAN という構成も一つの選択肢として選べるようになりました。

ここでは、安価で容易にサーバの外部ストレージを増設できる SUSE Linux (openSUSE Leap 15/SLE15) での iSCSI ストレージのマウント方法について説明します。


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良いところ

・仮想環境でも容易に外部ストレージの増設
・仮想環境でライブマイグレーションできる
・距離に関係なくストレージが使えるので地球の裏側でも ip で繋がれば遠隔地のバックアップ手段になる (物理的距離無関係)
・外部ストレージとしては FC-SAN より遥かに安価
・ソフトウェア接続なので、ハードウェアを遮断しなくても取り外せる
・IP 接続なので、比較的容易に安価に設計できる。
・経路がメタルでも光ファイバでもそんなの関係ない。
・最近の NAS ではほとんど標準装備されている。
・必要なサイズを必要なだけ好きなサイズで作成できる。

また
・10Gbit Ethernet を使えばほぼ SAS なみの速度が出る
・と言うより将来ネットワークインフラ自体が高速化されたら SAS 以上に速度が出る
・基本的に IP のオーバーヘッドがあるので FC-SAN よりは遅いが、 CIFS よりは早い。


悪いところ

・ IP オーバーヘッドがあるので FC-SAN より遅い、というか途中経路の速度次第
・DAS よりやっぱり遅い(でもストレージ性能を使い切っているのかな)
・基本的に通信速度はベストエフォート
・なぜか iSCSI - SAS のメディアコンバータがない(あれば LTO でリモートバックアップできるのに)


実際、SAS-Raid HDD ならそれなりに早いし、SATA-RAID なら安価で大容量のストレージを作る事ができるわけです。たぶん SSD ストレージなら帯域使い果たすでしょう。特に実用的なのは、低速でも構わない SATA のバックアップストレージや仮想環境のリモートマイグレーションと言ったところでしょうか。本社のサーバールームにあるストレージを、データセンタにバックアップするなどという事もできるわけです。

−− iSCSI ターゲット

SUSE Linux (openSISE/SLE) で ISCSI ターゲットへの接続は YaST GUI によって実に簡単に設定できます。特に何かの設定ファイルを書いたりする必要はありません。特に長たらしい iqn Target Name を設定ファイルに記述したり、ディスクのフォーマット、マウント操作を全て GUI でできるのは心強いでしょう。これに慣れたら他のディストリビューションでは、とても iSCSI を設定する気にはなりません。

iSCSI Target には、QBAP の TS-110 を使いました。QNAP の極初期モデル 10 年選手でまだ頑張っている NAS です。正直言って古くて遅いし、ファンが調子悪いのですが、使えているので検証目的なので頑張ってもらいます。

ISCSI ターゲットには誤接続を避けるため、パスワードを設定しておくと良いでしょう。

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-- iSCSI Initiator のインストール

SUSE Linux (openSUSE Leao 15.4) 側に iSCSI イニシエータをインストールします。

# yast2 &

YaST から iSCSI-Initiator を起動しますが、通常 openSUSE Leap 15 ではこの機能、アイコンはインストールされていません。

YaST2 > Software Manegement より "yast2-iscsi-client" を Search して、チェック、インストールします。

インストールできたら、一旦、YaST を終了させて、YaST を再起動させます。

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次に YaST > Network Services > iSCSI-Initiator を開くと、iSCSI を利用するためのパッケージがウィザード形式で自動的にインストールされます。

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ーー イニシエータからターゲットに接続

YaST から iSCSI Initistor のメインメニューの Discovery Targets タブを開き、"Discovery" します。

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ISCSI ターゲットの IP アドレスを設定し、もしターゲットに Chap 認証を付けてある場合、ユーザ名とパスワードをセットします。誤接続を避けるためにも、それぞれのターゲット毎に、異なるパウワードをつけるべきでしょう。

次へ

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接続できたら、Connected > True 状態になります。

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Connected Target タブを開いて、Startup が Manual になっています。起動時に自動的にマウントさせるために、Edit ボタンからStartup の種類を Automatic (自動) か On Bootに変更します。

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認証が必要な iSCSI ターゲットの場合、"Not Login Authentication" のチェックを外し、ユーザ名とパスワードを設定します。


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通常の Startup の設定は Automatic で構いませんが、起動時に自動マウント去せる場合は On Boot に設定します。マニュアルに次の記述があります。

14 IPネットワークの大容量記憶域 - iSCSI

"起動の切り替えをクリックして設定を変更します。

自動: このオプションは、iSCSIサービス自体の起動時に接続するiSCSIターゲットに使用されます。これが通常の設定です。

Onboot(起動時): このオプションは、起動時、つまりルート(/)がiSCSI上にある場合に接続するiSCSIターゲットに使用します。したがって、iSCSIターゲットデバイスはサーバの起動時にinitrdによって評価されます。このオプションはIBM Zなど、iSCSIからブートできないプラットフォームでは無視されます。したがって、これらのプラットフォームでは使用しないでください。代わりに自動を使用してください。"

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Service タブを開いて、iSCSI サービス自体の起動設定を Start on boot に設定し、システムブート時に systemd から起動させます。

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-- パーティションの設定

iSCSI デバイスをマウントするために YaST > Systen > Partitioner を開きます。Hard Disks デバイスの中に、イニシエータ、ターゲット共に問題なければ、SCSI デバイス(sdx)が新しく追加されています。

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YaST Partitiner で見つかった SCSI デバイスを Edit ボタンから、デバイスのマウントとフォーマットを設定します。

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マウント設定画面で fstab オプション > Arvitiary Optin に ”_netdev” オプションを設定しておくことをお勧めします。この設定を忘れると、ブート時に fstab で指定されたマウントポイントが正しくマウントされず、レスキューモードで起動してしまう場合があります。

SUSE Linux Enterprise Server 15 SP3 ストレージ管理ガイド


"1. ネットワークストレージの接続に失敗した場合にシステムが緊急モードでブートしないようにするため、/etc/fstabの各エントリにマウントオプション_netdevを追加することをお勧めします。"

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この fstab オプションを指定しておくと、/etc/fstab は次のように _netdev オプションが追加されます。

UUID=8a6f3ed3-be72-46ef-aa46-41e62d7c9030 /home xfs _netdev 0 0

ちなみに、iSCSI Target の設定は /etc/iscsid.conf に設定されます。

 
接続認証は Chap です。誤接続を防ぐために、最低限のパスワードを設定しておくといいでしょう。

基本的には iSCSI デバイスはパスワードを付けなくても接続できて(Windows には Initiator が標準です)しまいます。誤接続を防止するため iSCSI ストレージデバイスは専用のストレージネットワークに置くべきです。もし共有LANにある NAS の機能で iSCSI を利用する場合はパスワードを付けておくべきでしょう。

接続セッションでは Chap 認証が使えますが、通信そのものは暗号化されないので、その点も注意しておくことです。

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openSUSE Leap 15.4 で iSCSI ストレージを使う方法を説明しました。iSCSI ストレージはパフォーマンス全体では DAS や FC-SAN には劣るものの、構成の容易さ、導入価格の低さ、設置場所の柔軟さなどから、柔軟性のある外部ストレージです。

今度は iSCSI を使ったソフトウェア Raid 構成を考えてみたいですね。サーバールームのストレージと、データセンターの iSCSI ストレージでミラー構成にすれば、パフォーマンス云々の問題はありそうですが、バックアップ手段として使えないか。ちょっと考え中です。

Linux ソフトウェア Raid 作成 openSUSE 15.4 YaST GUI
iSCSI で遠隔地にRaid ミラーを作る方法


Linux で iSCSI ストレージサーバを作る












by islandcenter | 2022-09-10 11:45 | Linux | Comments(0)