2024年 10月 07日
Qualcomm が Intel を買収すると、PC はどうなる(妄想)

この報道を受けて、Intelの株価は乱高下しましたが、現実的にはありえないだろう、という見方が多いようです。しかし、まったく荒唐無稽とも言い切れません。
そもそも、買収してどうするのか、という具体的な計画がないため、現実性には欠ける状況です。
では、仮にQualcommがIntelを買収したらどうなるのか、あるいは、現実にIntelが主導するx86_64アーキテクチャが今後もスローダウンしていくと、PC業界がどうなるのかについて、少し想像を巡らせてみます。以下妄想です。
データセンターやプライベートクラウドで使用されるサーバは、ARM化が進むでしょう。データセンターで使われるソフトウェアは、多くがLinuxなどのオープンソースであり、一部のプロプライエタリなソフトウェアも、x86からARMへの移行に大きな障害はないと考えられます。
今すぐというわけではないですが、Intel x86に見切りをつけたのはAppleだけではありません。GoogleやAmazonも、Intelへの配慮が不要になることで、自由に動けるようになるでしょう。
データセンターの運用側にとっても、より省電力で小さなフットプリントを持つARMアーキテクチャが主流になることは歓迎されるでしょう。Raspberry Piのような軽量でデータセンターの床への影響も少ない、小型の基盤が大量に詰まった1Uのサーバが登場する日も近いかもしれません。自動車の自動運転など応用効果が大きな AI 技術にデータセンタや、5G通信技術を支えるには大量の電力が必要です。省電力は今の ICT 技術には必須なのです。
モバイルノートPCは、すでにMicrosoft Surfaceをはじめ、Qualcomm SnapDragonを搭載したPCが市場に出ています。これにより、PCメーカーの準備は整っています。あとは、Intel信者の顧客やIT担当者が決断するのみです。
しかし、一般のPCユーザーがすぐにARM搭載のモバイルPCに飛びつくかというと、そうではないでしょう。周辺機器メーカー、特にプリンタやスキャナなどの対応が遅れているためです。これらの機器は、Windowsカーネルに深く依存しているため、デバイスドライバの対応には時間がかかるからです。
それでも、周辺機器メーカーがARM Windowsに対応することは、AppleのMacに対応するのと同じく、ARM Windows上で動作保証することが無駄ではないと言えるでしょう。実際、多くのプリンタなどは、OS標準のドライバで対応できると見られています。
現時点では、SnapDragon搭載のWindows PCがMacBook Airのような高性能、省電力なデバイスだという評価は聞きませんが、それも時間の問題でしょう。
デスクトップPC、特にATX規格のPCについては、悩ましい問題です。電源コネクタの仕様やネジ穴の位置、マザーボードのピン配置など、Intelが標準化してきた功績は大きいです。
しかし、このATX規格は1990年代にIntelが策定したものであり、ARMを動かすにはフィットしないでしょう。メモリがSoCとしてCPUに統合される可能性もありますし、電力供給システムやチップセットも異なるため、PCIeバスの仕様も変わるでしょう。また、AIやグラフィックスが統合される可能性もあるため、x86アーキテクチャの遺産を捨てる覚悟が必要かもしれません。
ARM版のデスクトップPCを実現するには、プラットフォーム自体の再定義が必要になるでしょう。
そのため、Mini PCのような独自規格のプラットフォームが主流になりそうな気がします。Mini PCであれば、ACアダプター供給の電源を採用し、カスタムSoCを搭載した自由な設計が可能です。
極端な話ですが、スマートフォンサイズのデバイスを持ち運び、モバイルデバイスとして使用しつつ、オフィスではUSBハブ代わりのモニターにUSB接続してデスクトップとして機能するWindowsデバイスが登場するかもしれません。まさに、Windows Mobileの再来です。携帯電話は、もはや通話のためのデバイスではなく、もし音声通話がIP電話で問題ないのであれば、VoLTEでなくても構わないのです。データSIMだけを搭載できれば、ARM版WindowsでIP通話アプリケーションを使用するだけでも十分でしょう。Teams や Zoom, Line などのコミュニケーションアプリなら豊富にあります。
現実的に実現できるかどうかはわかりませんが、最近のSnapdragon搭載のスマートフォンにそのままWindows ARM版をインストールできるのではないか、と考えています。実際、技術に詳しい猛者の中には、AndroidスマートフォンにUbuntuをインストールしたり、iPhoneにUTMを入れてWindowsを動かしている方もいるようなので、AndroidスマートフォンでWindowsをネイティブに動かすことも夢ではないはずです。
そうなると、残るAMDはどのような立ち位置になるのでしょうか。おそらく、AMDがARMアーキテクチャのCPUを設計することは考えにくく、ファブレス企業としてx86互換CPUの設計・販売を続けるしかないでしょう。巨人 Intel の背後に居たから AMD は輝けました。巨人 Intel がもし倒れる事があれば x86_64 アキテクチャを背負う AMD の役割は重大です。
Intelの今後がどうなるかはわかりませんが、x86_64というプラットフォームは依然として残るため、自作PC市場やデスクトップ、ノートブックなどのx86プラットフォームは続くでしょう。仮にIntelがx86系CPUの製造から撤退し、開発と販売に集中する場合、AMDがx86市場を引っ張る役割を担うかもしれません。
そもそも、x86互換64bit、AM64を最初に出し、x86_64を主導したのはIntelではなくAMDです。もしIntelが不調になり、AMDが再び活気づくようなことがあれば、市場としては非常に興味深い展開になるでしょう。
たとえ Qualcomm からの買収提案が没になっても、このまま Intel の業績不調が続くでしょう。Intel はどうなってしまうのでしょうか。考えられるのは、まず半導体製造部門の分社化です。Intel は x86_64 マイクロコードを他社にライセンスして製造させる、今の ARM の様な存在になるかも知れません。
そうなると実際に CPU あるいは SoC として設計するのは Microssoft や Google だったり、Dell や HP なんかが、x86_64 ベースの半導体を設計し、TSMC の様なファウンダリに製造してもらう。x86_64のオープン化です。でも、Intel の市場支配力は低下することは間違いありません。Intelが復活するにはファウンドリ事業を分割するしかないのか?
いずれにせよ、今、主力製品の Core i プロセサのバグ騒動に見舞われており、AI チップも nVidia にお蕪を攫われ、いいことが全然ない Intel にとって大規模な経費削減をするなら、どういう手があるのでしょうか。今後に注目しておきたい Intel の次の手です。結局 Intel は過去の栄光であり、AI と 自動運転のニーズに乗り切れなかったのだ(過去形)