2009年 03月 26日
仮想化を妨げる幾つかのポイント
小さな組織であれば問題は少ないけれど、組織の規模がある程度大きくなると、おのずと組織の中の「縄張り争い」というものが発生します。
ネットワークのインフラ、全社向けのメール、グループウェアはシステム部が管理しているけれど、営業管理システム、人事管理システム、生産管理システム、という具合に各システムが各部門に設置されたり管理されたり導入されたりしているケースが多いわけです。それもほとんどが異なるベンダーのシステムなのですね。
巨大なデータベースを必要として、かなりクリティカルなシステムであれば、部門に管理させても構わないのでしょうが、エンドユーザが数人しかいないシステムで、ディスク容量や稼働率の低いシステムも多いのが事実。
こういった単発もののシステムは仮想化して利用効率を上げたいところなのですが、部門のエゴにより、容易にシステム部の管理下の仮想システムで運用するためには、組織内の政治問題を解決しなければなりません。
また、リースや契約の関係から、簡単に仮想環境に移行するという話にはならないところが悩みです。
-ベンダーの縄張り争い-
これも困った問題です。
どことは言いませんが、仮にF社としましょうか(もうばれてますね)日本のハードウェアベンダーが作った、役所関係の電子申請システムを導入するにあたり、「ウチのハードウェアでない限り動作保障もサポートもしません」というケースがありました。ただの Windows のソフトウェアなのですがね。ということでどういうわけか、H社のPCで統一されているはずの顧客に一台だけ、その国産ベンダーのマシンがあったというケースがあります。一括でハードウェアベンダーとのサポート修理の契約が行えれば、運用側にも大変メリットがあるのですが、このように1台だけ特殊な契約にしなければならないとなると、契約の手間だけでも面倒なのです。
同様に仮想化システムでは1台のハードウェアに複数のオペレーティングシステム、複数のアプリケーションが混在するわけですから、ベンダーのサポート責任、業務範囲、契約内容といったものを解決しなければなりません。当たり前ですが、SI業者の中にはハードウェアとソフトウェアと一体で販売し、一体でサポートしたがる傾向があり、この考え方は仮想化の方向と相容れないものがあります。自社が販売したシステムじゃないとセットアップしませんと堂々と言い出すSI業者もあるし、セットアップと言っても単にセットアップソフトウェアを起動してウィザードやるだけなのに20万とか取る業者もいるわけです。
極端な話ですが、「ウチでは動いた」と強引に言い張って、平気で済まそうとしたソフトウェア開発業者がいました。何のことはない「管理者モード」で動かせば問題がないのに、「ユーザモード」で動かすとトラブルが出るという簡単な問題なのですが、こういった無責任な開発者がいまだに運用技術者を見下していることは私には許せません。
-SI業者、ソフトウェアベンダー、開発者-
SI業者、あるいはソフトウェアベンダーの意識の低さも非常に問題があります。あるソフトウェアでどうしても仮想化環境で動作しないプログラムがありました。たかが500Mバイト程度のデータベースを動かすだけで、稼働率も非常に低いソフトウェアです。こういうソフトウェアはぜひ仮想化システムに載せたいところなのですが、不具合に対しては「仮想化環境では保障はしない」の一点張りで、実際の検証、回避策の提示、バグのフィックスなどは一切提供してくれず、やむなくハードウェアを追加しなければならなかったケースがあります。国産ハードベンダー系でもうどことは言いませんがね。
一般的にはハードウェアやインフラを提供するベンダーの仮想化に対する意欲というのは、特に国産ベンダーより海外ベンダーの方が非常に意欲が高いのですが、実力がない国内のベンダーやソフトウェア提供者には仮想化環境に対する情報提供や実力がまだまだ低いのが実情です。
-結局スキルが必要とされる-
ということで結局は顧客側のスキルが要求されるのです。顧客のスキルというのは技術スキルだけではありません。社内の調整とベンダー間とのサポート能力の調整です。
ハードウェアのメンテナンス、ソフトウェアのトラブル、ネットワークのトラブル。こういった微妙な不具合を見つけ出して、必要なサポートをどうやって手に入れるかについては、結局運用側のスキルが必要になってきます。オマケにクラウド化によって、下手をすれば運用技術が低下してしまうシステム管理者にとっては頭の痛い問題と言えます。
一般にシステム運用の技術者は「所詮ヘルプデスクとバックアップオペレータだろ」という低いレベルで見られがちで、つい外注化、派遣化されたり、優秀なプロパーのエンジニアが外されたりするわけですが、システムが熟成してくると、運用こそ組織の命であるということに気が付かない経営層が多いことも問題です。