2009年 04月 20日
中小システムでの仮想化
難しいとは思いません。ただ、初めて見たときの驚きと軽いカルチャーショックは覚悟していいと思います。初めて同軸ケーブルを半田で加工してでPC同士を繋いで、構内ネットワークを作ったときの感動や、初めてインターネットで Yahoo を見た時のショックに似ています。
ボクがはじめ仮想化システムに苦労していたときに、びぎねっとの宮原さんのハンズオンを体験したときのあの感動はそのままです。オトコには永遠に判らない懐妊感というか、このシステムの中に別なシステムが一つ動いているという、新鮮な体験を味わうことができるでしょう。この驚きは過去に仮想化システムを導入したお客様には共通な驚きのようです。
仮想化が難しいのは、技術より組織の政治面での苦労でしょう。これはワタクシのように組織を離れて個人でやっているエンジニアにとってはコメントのしようがありません。一式でリースされた機材、ソフトウェアとOSとハードウェアが一緒くたに「固定資産」として計上されているシステム、組織と部門のエゴ、あとは取引先のSI業者との調整。こういったことの方が苦労すると思います。
-仮想化はデータセンターのものではない
世の中で、「仮想化」というキーワードで色々調べると、やれデータセンターだとか、巨大ストレージだとか、そんなキーワードが引っかかりますが、今どき、20Gバイトのストレージが巨大システムだといえるでしょうか。仮想化の事例としては大企業での仮想化システムの事例が良く挙げられます。仮想化とはそういった大企業、大規模システムの占有するものではありません。
確かに、数年前であれば、20Gバイト程度のストレージを持つシステムであれば、組織の命運をかけたような巨大なシステムだったわけですが、今時であれば、DVD数枚、あるいはBDディスクやメモリカードに持ち運べる程度のデータ量に過ぎません。そのようなシステムを構築するために、新しいシステムラックスペースと電源、ネットワークのコネクタの確保を考える程度であれば、仮想化という選択肢は全然不思議でもないのですね。
仮想化システムを導入した中小組織のシステム担当者の目の前で、新しいシステムを仮想化して立ち上げると、必ず感動してくれます。彼らの頭の中で色々なアイディアと驚きが動き回っているのがよくわかります。何しろ、上司に稟議書を書くこともなく、簡単に自分が考えていたアイディアが実現できるのです。
仮想化はデータセンターや大企業のものではありません。今時電子メールやインターネットが当たり前のように使われている時代に仮想化システムは当たり前となっていくことでしょう。
また、「仮想化は惨事復旧プランやロードバランスと一緒に考えなければならない」という意見があります。確かにロードバランスは重要ですが、今までコンピュータシステムを導入した組織で、完全な惨事復旧プランを考えられた組織がどれくらいあるでしょうか。どの現場でも精々ディスクをミラー化するか、ストライプ運用する程度で、「完全に24時間365日の運用を保障する」システムなど中小の組織で導入されたという話はあまり聞きません。「壊れたら困るね」程度のバックアップ対策を取っているところがほとんどではないでしょうか。
その程度の復旧対策が必要であれば、特に複雑な仕掛けを必要としたシステムの仮想化などは必要ありません。大規模データセンターでもない限り、実際に1Uのラックマウントシステムに複数のサービスを仮想化して運用し、定期的に仮想イメージのバックアップを取って運用するという程度がほとんどだと思います。
-20%のアイディアを実現
Google 方式でもありませんが、組織で雇われている人は100%組織に貢献することが期待されています。それで給料を貰っているのだと考える経営者もいるでしょう。しかし、組織を育て、大きくするためには、組織に所属している皆さんが常に20%の余裕をもって、自分が何に功労できるかという発想です。
今まで、システム部門はその20%の発想を実現させるために、大変な量の会議を重ねて稟議書を書いてきました。そうして新しいハードウェアを購入して「テスト」する機会を得てきたのです。この苦労を減らす手段として仮想化システムというのは新鮮な驚きなのですね。
まず仮想化してどんなイメージが作り上げられるかを試して、そこからより重要なシステムを構築していくという柔軟な開発手段がこれからの主流になるでしょう。
-システムが抱える問題
日ごろ、システム運用を行う上で、様々な要求が求められます。その中で100%業務に密接にリンクするものと、間接的に求められるものとがあります。
例えば、工場の生産ラインや受発注のシステムなどは営業日は必ず動かなければなりませんが、営業時間外であれば、バッチ処理を行ったりメンテナンスの時間を取ることができます。パッチの配布、ウィルス対策、ポリシー管理などはどちらかというと間接的なものです。メールサーバー、グループウェア、ファイルサーバなどのシステムは24時間稼動が必要ですが、短時間のメンテナンスなら組織として許せる場合があります。しかし、こういったシステムではストレージの容量を簡単に見積もることができません。
無限に容量が増える可能性のあるシステムは仮想化には向きません。例えばグループウェアやファイルサーバなどがそうでしょう。定型化、定量化した業務、システムのインフラを支えるシステムであれば仮想化のメリットは大きいでしょう。
-ビジネスのスケールはどうか
たとえ経理だとか人事のシステムでも従来は数Gバイトのストレージで運用していたシステムを更新したところでいきなりテラバイトクラスになることはあり得ません。いくらビジネスのスピードが求められると言われても、普通の組織を前提として考えると、成長のスピードは、コンピュータの処理能力の向上のスピードに追いつけるわけがないのです。今まで3Uくらいのスペースと電力を必要としていたシステムを更改するとき、おそらく1Uのスペースで充分余力があるはずなのです。
そういう意味で、次のシステムの更改では仮想化を前提とした運用でも充分ではないでしょうか。仮想化による余力で次のシステムのアイディアをテストして行くことは不思議でも何でもないのです。