2009年 06月 11日
バスで出かけるか、車で出かけるか
おそらく普通の家庭ではバスは所有していません。パーソナルでバスを所有することは趣味人でなければ普通はありえないことです。
自動車なら所有することができるでしょう。ガレージに行ってキーを捻ればB地点へ出かけて、ついでにC地点によって、途中コンビニエンスストアで買い物をして重たい荷物を後部シートに放り込んで帰ってくることができます。
バスはそうは行きません。まず、最寄のバス停まで出かけなければなりません。そもそも、最寄にバス停があれば良いのですが、ひょっとしたら、バスは一日数往復しかない山間部であれば、バスで出かけることに躊躇するかも知れません。しかも目的地のバス停から更に歩かないと市役所に住民票を取りに行くこともできないことが良くあります。重たい荷物を抱えてスーパーとバス停の間を往復しなければなりません。よく晴れた夜に突然、星空を見に行きたくなって八ヶ岳の麓に出かけて天の川を眺めるという思いつきの素晴らしい経験もできないでしょう。
それを思うとやっぱり自家用を所有するという考えは決して悪くはありません。
しかし自動車を維持するにはコストがかかります。保険、税金、ガソリン代、街中ならば駐車場の確保も問題です。また、自動車を運転するにはあなた自身が自動車を正しく運転する技術が必要です。時にはバッテリーが上がってしまってエンジンがかからないという非常事態がありえるかも知れません。正しい知識があれば、バッテリーを交換したり、オイルを注ぎ足したり、ガソリンを自分で補充することも自分でできるようになるでしょう。もう少し知識と専用の工具があればタイヤの交換やプラグの掃除もプロに頼まず自分でやれるかもしれないでしょう。
交通事故であなたの人生や家族に深刻なダメージを受ける可能性もあります。もし、積雪がある地帯だったら、冬場は市道まで自分で除雪しなければ出かけることもできないかも知れません。運転中は本も読めないし、素晴らしい季節の変化も眺めずにずっと前の車のテールランプを見ている必要があります。
こういった便利さを放棄して、自動車を所有しないという割り切ったことを考えている人もいます。もっとも免許を取れる年代までは自分で自動車を運転することはできないのですが。行政や社会もそういうライフスタイルを推奨していると、バス通りの整備費用だけで済むわけです。バス路線や大通りのインフラを整備するだけですから、コストは下がります。運転手を養成するというコストは、運転手はプロのドライバーに必要なだけで、彼らは滅多に事故を起こしません。もっとも大きな事故を起こすと大変な惨事になります。私たちはガソリンキャップのあけ方も自動車の運転方法を知らずに済むかもしれません。
公共交通機関を使えばほとんど日本中のどこにでも出かけられるかもしれません。足腰と忍耐は鍛えられるかもしれません。しかし、公共交通機関ばかりの生活だと、子供が急に熱を出したとか、夜中に電球が切れたとかと言った非常事態にどう対応すればよいのか悩むこともあるかもしれません。もっともバス会社が破産したとか、鉄道が廃線になったということは日本では珍しいことではないのです。
普段、公共交通機関ばかり使っているため、ガレージの自動車には埃が積もっていて、バッテリーもオイルも切れているかもしれないし、そもそも車検や保険が切れている場合もあるでしょう。また、長年、自動車を運転していないため、あなた自身がギアボックスの使い方を忘れているかもしれないのです。なによりも、普段から自動車を運転していないので、自動車を運転する場合がある、という仕事にも就けない可能性があります。
コンピュータとネットワークの世界を、パーソナルコンピュータ、クラウド、シンクライアントというキーワードで考えた場合、公共交通機関を使うかパーソナルな利便性が重要か、私たちの利便性を考えるか、公共(組織)の利益を考えるかで違う見方ができます。
バスと自家用車の比較なのか、エアラインとパーソナルジェットとの違いかもしれません。